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第1031話 別離 33-4

 ゆっくりと近づいた藤堂に頬ずりされて、くすぐったさに肩をすくめる。すり寄るように頬に口づけされると、じわりと熱を帯びた。胸がやたらと音を早めていく。目の前にある瞳をまっすぐに見つめたら、熱のこもった目で見つめ返された。 「藤堂、早く抱きしめて」  右腕を撫でている手を胸元へ引き寄せて、その先をねだる。心の奥を覗き込まれるのが恥ずかしくて、目を閉じたら藤堂の唇は顎を伝い首筋に落ちた。時折薄い皮膚に吸い付く唇は優しく撫でるように肌の上を滑る。そして指先が肌を伝うたびにその感触に肩が震えた。 「藤堂、愛してる」  こんな愛おしさはほかに知らない。触れているだけで幸せなんだ。隙間を埋めるみたいに抱き合って、求め合うように口づけて、息ができないくらい胸が苦しくて熱くて仕方がない。  二人の熱を重ねるだけで腹の底からじわじわと疼いてくる。ねだるように揺れる身体を止める術はなくて、すがりつくように藤堂の肩にしがみついた。そしてそんな僕の背を片腕で抱き寄せる藤堂は、噛みつくような荒い口づけをする。けれどそれがますます気持ちを高ぶらせていく。ずっと足りなかった藤堂をもっと心に満たしたい、そんな想いが湧いた。 「泣かないで佐樹さん」 「や、ぁっ……もう、駄目」  優しく舌先で涙を拭われるだけでぞくりとした高揚感が身体を震わせる。藤堂の手の上に自分の両手を重ねて、その先の高まりを求めれば、腰が砕けてしまいそうなほど甘い痺れが広がり、止めどなく涙がこぼれた。  頭の中が真っ白になる。気づけば藤堂の肩口にもたれて荒く呼吸を繰り返していた。久しぶりに感じた過ぎるほどの快感に頭がぼんやりとして、思考が定まらない。 「佐樹さん、可愛い」 「や、だ……くすぐるな」  耳元で聞こえる笑い声と、そこから湧き上がる痺れるような感覚に肩が跳ね上がってしまう。

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