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第1040話 始まり 1-4
小さく首を傾げてこちらを見る目はやんわりと細められ、口元は弧を描き綺麗な笑みをかたどっている。
いつみても隙がないほどのイケメンぶりだ。その華やかさは年を経てさらに磨きがかかったように思える。在校中は茶色い髪で前髪や襟足が少し長めだったが、いまは髪を黒に近い焦げ茶色に染めて首元がすっきりとした髪型になっている。色味が落ち着いた分、軽い感じがなくなって大人の色気が増したのではないだろうか。
その完璧過ぎるルックスは大学時代には有効活用されていたようで、モデルとして様々な雑誌に華を添えていた。高校三年の夏に一度だけカメラの前に立ったあれがきっかけのようだ。てっきり僕はそのままプロのモデルとしてやっていくのだとばかり思っていたので、峰岸が教師になったと聞いた時には驚きしかなかった。
「わざわざこんなところで待たなくてもいいだろ。中で先生たちと待っていればいいのに」
「先生たちの井戸端会議にはそんなに興味ない」
「だったら混ざらなければいいのに」
肩をすくめて笑った峰岸に僕は思わずため息を漏らす。教師として再会して真っ先に、以前と変わらず好きだけどあいつとのあいだに横入りするつもりはないからと言われた。一体なんの宣言なのだろうと思ったのだが、峰岸のスキンシップの多さは在校中と本当に変わりなく、言われていなければ戸惑ったかもしれない。
それにいまもこうしてなにかと僕にべったりなところがある。しかしほかの先生たちと馴染んでいないのかと言えばそんなことはなく、もう何年目だろうかというくらい職員室にも馴染んでいる。僕のあとをついて回るところはあるけれど、間宮の新任当初と比べたら峰岸のほうが遙かに社交的だ。
悪いところはないのだが、気になると言えば気になる。けれど僕は峰岸との付き合いで学んだのだ。下手な藪はつつかない、それが一番に厳守するところだと思う。だからどんなに気になってもその部分は見なかったことにする。
にこやかに笑う峰岸に僕は息をついて肩をすくめた。
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