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第1041話 始まり 2-1

 人を手のひらの上で転がしてしまいそうなところは相変わらずだが、峰岸の教師としての評価は高いと言ってもいいだろう。生徒に人気があるのはもちろん、父兄たちの評判もいい。顔のよさもそれに含まれているかもしれないけれど、元々スキルが高いので気配りも根回しも完璧なところがある。飯田の後釜的な立ち位置でやって来たが、二年生の英語の成績が全体的に少し上がった。それは驚くべき結果だろう。  結局なにをさせても峰岸はそつなくこなしてしまい、在学期間中と同様の圧倒的な存在感はさすがとも言える。 「それにしても、センセはなんでマミちゃん許しちゃったんだか」 「まだ言ってるのかそれ」  こちらに腕を伸ばし肩に手を置いた峰岸はじっと僕を見つめる。間宮と一緒にいると峰岸はいつも思い出したように同じことを言う。 「お前も知っていながら黙ってたのは同罪だからな」 「それは、謝っただろう」 「だったらもうこの話は終わりだ」  間宮が僕のあとをついて回っていた、約四ヶ月のあいだの出来事を峰岸は気づいていた。気づいていてずっと黙認していたのだ。実害はないだろうという判断は間違いではないと思うけれど、知っていながら止めないのもどうかと思う。暗に気をつけろと忠告されたけれど、あれだけでははっきり言って僕にはわからない。 「間宮のこと言うなら、お前とも口を利かないからな」 「相変わらずお人好しだなぁ、センセは」 「そんなつもりはない」  別に間宮のことは許したというわけではない。元々あのことについてそんなに怒っていたわけでもないし、驚きとか呆れのほうが大きかったせいもある。だから大げさに捉えられなくて、むしろいきなり距離を置いてきた間宮に腹が立ったくらいだ。まあ、懐いていたものが急にそっぽを向いた気がして、寂しかったのかもしれないけれど。だからお人好し云々ではなく、これは僕の勝手なのだ。

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