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第1042話 始まり 2-2
「ほら、邪魔だ。僕は井戸端会議に参加しに来たんだよ」
肩に置かれた峰岸の手をよけると、僕は峰岸の背後にある扉を引き開ける。すると中から少し賑やかな笑い声が聞こえてきた。
「おや、西岡先生おかえりなさい。忠犬も帰ってきましたね」
「忠犬?」
教室内にいた先生たちがこちらを見てくすくすと笑みをこぼしている。そんな中で新崎先生が至極楽しげな顔をして僕やその後ろにいる間宮と峰岸を見た。先生たちの笑みの元がわからない僕は、新崎先生の言葉に大きく首を傾げてしまった。
「西岡先生はどうしてるかな、と言ったら、すぐさま二人が出て行ったんですよ。ご主人様を迎えに行く忠犬のようでしたよ」
「そ、そういうこと言うのはやめてください。お前たちも僕のことばかり気にするのはやめろよ」
微笑ましそうに見られているが、恥ずかしいことこの上ない。熱くなった頬を誤魔化すように後ろにいた峰岸と間宮を前に突き出すと、僕は二つの背中を押して職員室に足を踏み入れた。しかし二人ともまったく悪びれた様子はない。恥ずかしい思いをしているのは僕だけのようだ。
「まあまあ、こっちへ来て美味しいお菓子でお茶にしましょう」
「センセ、顔真っ赤。可愛い」
「うるさい」
人の顔を覗き見て笑う峰岸の背中を叩きながら、僕は誘われるままに和やかなお茶会の席に着いた。
今日は珍しく人数が少なく、僕たちを除いて四人しかいない。紅一点は峰岸と同じ新任の若い先生だ。ハキハキとした元気のいい印象で生徒からの好感度も高い。峰岸と違いまだ不慣れな感じで初々しさがある。もう一人の先生は間宮よりもあとに入ってきた先生で、確か今年で三年目くらいだったのでまだまだ若い。あと一人は新崎先生に年も近い年長の先生だ。
「峰岸は西岡先生に憧れて教師になったくらいだからなぁ」
「余計なことは言わないでください」
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