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第1043話 始まり 2-3
「まさかお前がわしに敬語を使う日が来るとは思わなかったぞ」
「最初に言葉がなってないとか言ったの重田だろうが!」
そういえばこの年長の重田先生は、峰岸が三年の時に担任だった先生だ。峰岸が赴任してくるのを知って驚かなかったのは、この先生と新崎先生くらいだった。一体いつ峰岸は教師になろうと思ったのだろう。そんな素振り全然見せなかったのに意外過ぎる。それにきっかけが僕だったなんて初耳だ。
「大学なんて入れればどこでもいいって言っていたのにねぇ」
「峰岸は西岡先生に出会ってよかったな」
「俺の話はいいんだよ! もっとほかにあるだろう」
新崎先生たちに話のネタにされているのは恥ずかしいのか、峰岸は珍しく慌てた様子で話を遮る。さすがの峰岸もこの二人の先生の前では子供同然なのかもしれない。けれどそんな様子を見るのはなんだかほっとするし嬉しい。普段は相も変わらず大人びているから、時々とても心配になってしまうのだ。
「峰岸先生の学生時代って気になります」
「生徒会長していたんですよね。貫禄ありそうだ」
「峰岸の話題なら事欠かないぞ」
興味津々な若い先生たちに教え子の自慢話が始まる。盛り上がる三人に当事者である峰岸は苦い顔をしていた。そんな様子をにこやかに新崎先生が見つめている。
「峰岸くんがいると一番賑やかだった生徒会を思い出しますね」
「マミちゃんまで昔話を始めるなよ」
「いまも充実していますが、あの当時が一番大変で楽しかったですよ。全員卒業してしまって少し寂しかったです。なのでこうしてまた峰岸くんと一緒に仕事できるのは嬉しいなと思ってます」
「そうかよ、それはよかったな」
まっすぐな間宮の言葉が照れくさかったのだろう。峰岸の頬が微かに赤く染まる。それに気づいているのかいないのか、間宮はにこにことした笑みを浮かべて峰岸を見ていた。
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