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第1047話 始まり 3-3
後部座席に座っていたのは、肩先までまっすぐ伸びた黒髪と、ぱっちりとした大きな黒い瞳が印象的な色白美人、片平だ。いまは母親が三島の父親と再婚をして三島の姓を名乗っているのだが、三島が二人もいるとややこしいので片平と呼ばせてもらうことにした。
彼女とは確か今年の正月に神社で会った以来だろうか。初詣に行く神社が片平や三島と同じでたびたび遭遇するのだ。毎年綺麗な振り袖を着てお参りしているが、それも今年が見納めだった。そう思うとなんだか感慨深い。
高校最後の写真展覧会で審査委員特別賞を授与された片平は、出版社に声をかけられ大学に通いながら写真の勉強をして、仕事もこなしていた。いまでは写真集も二冊発売されプロの仲間入りを果たしている。そんな片平を見初めた人がいて、十二月に結婚することが決まっているのだ。相手は出版社の編集長さんと言っていたから年の差婚になるのだろうか。
「結婚か、時間の流れを感じるな」
「先生は結婚式に参加してよね!」
「もちろん、参加させてもらう」
きっと片平のウェディングドレス姿は綺麗だろう。大学生になってから年に何回か会っていたが、会うたび綺麗になって眩しいほどだった。女の子は男の子とは違った成長があって驚かされるものだ。
「若い内に結婚とかめんどくせぇ」
「うるさいわね、根無し草に言われても説得力ないわ」
「峰岸は特定な相手ずっといないよね」
ぽつりと呟いた峰岸の言葉に片平は眉を寄せて口を曲げた。そんな二人の様子に声上げて笑った三島は、肩をすくめて隣に座る峰岸に視線を向ける。
この三人はなんだかんだと高校卒業後も接点があり交流が続いていたようだ。三人のあいだに立つのは三島だろうか。峰岸と三島は大学が一緒だったようで、学部は違ったらしいのだが縁が続いていた。三島の傍には当然片平もいるので、峰岸も会う機会が多かったのだという。
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