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第1050話 始まり 4-2

 確かにたまに無性に声を聞きたくなったり、顔を見たくなったりはするけれど。でもそういう時は高校時代の写真なんかを見て気を紛らわせる。  片平がこれでもかと言うほど写真を残してくれたので、それに困ったことは一度もない。 「けどメールも電話もしない上に、向こうにいるあいだ一度も帰らないってのはどうかと思うけどな」 「まあ、薄情に見えるけど、会うと帰りたくなっちゃう気持ちもわかるわ」 「優哉なりに頑張ったと思うよ」  ため息交じりの峰岸の言葉に片平や三島も息をつく。高校を卒業して峰岸たちは大学を出て社会人になった。あれからもう四年が過ぎたのだ。曾祖母が存命のあいだ時雨さんの元で暮らすと言っていたが、実際のところは少し話が変わっていた。  彼が向こうへ行ってから一年半ほどで彼の曾祖母は亡くなった。けれどまだ勉強したいことがあるからと帰国は先延ばしになったのだ。その間の四年と半年――彼は一度も日本に帰国していない。 「センセはいつもあいつに振り回されてる気がするんだけど」 「それはいいんだ。ちゃんと話してお互い納得してるから気にしてない」  まだ帰れないからもうしばらく待っていて欲しい、そう言われた時は正直寂しかったけれど、彼の将来を考えたらそのほうがずっといいと思った。せっかく勉強をしているのに僕のせいで中途半端にして帰ってくるなんて、そっちのほうが心配になる。どうせならやりたいことをとことんやって、たくさん経験して成長した彼に会いたい。 「覚えることがなくなるまで、やりきって帰ってきて欲しいよ」 「西岡先生ってば健気ね」 「そんな西やんに会わせたい人がいるんだよね」 「会わせたい人?」  バックミラー越しに微笑んだ三島に思わず首を傾げてしまった。今日は久しぶりに四人でご飯でも食べようと言う話だったはずだが、僕に会わせたい人とは誰だろう。

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