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第1051話 始まり 4-3
そういえばいつの間にか車は市街地から郊外に抜けていた。今日はどこに行くのかまったく聞いていなかった。けれど窓の外を眺めていると次第に目の前を流れる景色を思い出してきた。
「もしかして空港に向かってる?」
「そう、いまからその人を迎えに行くから」
「え? そうなのか」
突然のことに驚きを隠せない。けれど会わせたい人とは一体誰なのだろうか。飛行機でやってくる地方の知人はそんなに多くない。しかし僕の知人をこの三人が知ってるとは思えないし、僕の知らない人なのか。けれど胸の中に予感めいたなにかが湧いてくる。まさかと思う気持ちと、そうだったらいいと思う気持ちがない交ぜになった。
三人の表情を見れば微かに口元に笑みが浮かんでいるようにも見える。
「これは、期待してもいいんだろうか」
この前届いた手紙にはそれらしいことはなにも書いていなかった。今度こちらへ手紙が届くのはいつだろう。いつものペースで行けば――今日明日には届くのではないか。もしそうなのであれば、きっとその手紙になにか書かれているはずだ。
「期待してていいよ」
三島の笑みと言葉に言われるままに期待が一気に膨らんだ。胸がドキドキとしてくる。まさかこんな急に会えることになるなんて思いもしなかった。
「三人とも帰ってくることは前から知ってたのか?」
「今週に入ってからよ。弥彦のところにメールが来たの。週末に帰るって」
「それに返信して、予定が変わったって連絡くれたのおとといかな」
どうやら元々の予定では、もう二、三日あとに帰国するはずだったようだ。しかしそれがおとといになって急に予定が変更になったらしい。三島がタイミングよく返信をしてくれなかったら、今日帰ってくることは知ることができなかった。偶然だとはいえ感謝しなければ。
「あいつってば、やっぱり西岡先生に伝え忘れてたのね」
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