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第1058話 始まり 6-2

 その笑顔がひどく無邪気で、僕まで口元を緩めてしまう。 「指輪、してくれてるんだな」  握った左手の薬指には僕が贈った指輪がはめられていた。それが嬉しくてそっと指先で指輪をなぞったら、空いた片方の手で僕の左手がすくい上げられた。 「佐樹さんも、してくれていて嬉しいです」 「いまはずっと外してないぞ」 「もしかして、学校でも?」 「うん、もう隠さなくてもいいだろ」 「そうなんだ。ありがとう、佐樹さん」  そっと指先に口づけられて胸の鼓動がとくんと音を立てた。久しぶりの感覚に思わず顔がふやけたように緩んでしまう。照れくさくてすぐに俯いたけれど、小さな笑い声が聞こえた。多分きっと耳まで赤くなっているに違いない。 「あ、そうだ。三島たちに連絡しないと」  熱くなった頬を誤魔化すようにわざと話題を変える。そんな僕に気づいているだろう優哉は目を細めて優しく笑った。 「さっき弥彦に電話したら出なかったんですけど、ほかにはあずみですか?」 「ああ、あと峰岸」 「本当にまだ三人繋がっていたんですね」  携帯電話を取り出した僕を見つめて優哉は肩をすくめた。どうやら三人の交流を知っているようだ。三人とも別々に連絡を取り合っていたみたいだけれど、話題にでも上っていたのだろうか。思えばあの三人は僕が知るよりも交流は盛んかもしれない。 「あれ、近くないか?」  三島の携帯電話に発信したら近くから着信メロディが鳴り響いた。注意深く視線を巡らすと、数メートル先の柱の陰に人影が見えた。三島も峰岸も背が高いのですぐに目につく。優哉の手を引いてそちらに向かっていくと、三島が慌てた様子で携帯電話を手にしたのが見えた。 「もしもし、なんで隠れてるんだよ」 「あー、ごめん。邪魔しちゃ悪いかと思って」 「そういうのは恥ずかしいからやめろ」

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