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第1060話 始まり 6-4

 久しぶりに会ったというのに、その時間を感じさせないほど会話が弾んでいる。 「優哉、西岡先生には謝った? もう、肝心なこと忘れるんだから」 「ほんとだぜ、こまめに連絡くれた三島に感謝するんだな」 「わかってる」 「四年経って私たちはあんまり変わっていない気がしたけど。優哉は結構雰囲気が変わったわね。背も伸びた?」 「二、三センチくらいだから、大して変わってないと思うけど」  あれこれと質問攻めにされる優哉はずっと困ったような顔をしている。特に今回のことは三人にいじられっぱなしだ。それでも空気は穏やかで、彼らの学生時代を思い出させる。みんな随分と大人になったけれど、中身のまっすぐさは全く変わらないなと思う。懐かしさを覚えながらしみじみと四人を眺めてしまった。 「あ、もうすぐ着くよ」 「いまから行く店はね、このあいだ初めて連れてきてもらったんだけど。料理は美味しいし、ワインも豊富なの」  三島と片平の声につられ窓の外へ視線を向けると、見えてきたのは落ち着いたブラウンの外壁とダークグリーンの平屋根。小さな佇まいのその店は、華美な装飾もなく周りの住宅に溶け込んでいた。けれど店の前にある手書きの看板と入り口のオレンジ色の照明が、そこがレストランなのだと教えてくれる。 「時間もちょうどいいね。よかった」  二台分ある駐車場の片側にまっすぐと車が収まった。そして車が完全に停車すると僕たちは揃って店へと向かう。思えばこの面子だけで食事をするのは初めてだ。みんなで一緒に弁当を広げて食べたことはあるけれど、こうして全員集まることも卒業以来初めてだし、なんだか嬉しくなった。これからはこんな日が増えるのだろうか。隣に立つ優哉を見上げたら、小さく首を傾げて笑みを返してくれる。それだけでなんだかとても心が浮き立つような気がした。

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