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第1061話 始まり 7-1
片平がおすすめのお店はイタリアンレストランだった。シェフ一人に店員が一人で、テーブル席が四つほどの小さな店だ。長くこの場所で営業しているそうで二十年ほどになるとか。けれど店内は古びた様子もなくとても綺麗だ。店には先客がひと組いたが、僕たちが注文し終わった頃に席を立った。そしてお店は貸し切りのような状態になり、食事もスムーズに運ばれてのんびりと美味しい料理を堪能できた。
「え? また帰るの?」
「帰ると言っても何日か向こうに戻るだけだ」
食事しながらの話題はやはり優哉の話が主だ。いまは今後について話している。今回は日本で暮らす準備とこちらでする仕事の都合で一時帰国したらしく、しばらく過ごしてまたもう一度向こうへ戻るようだ。どうやらまだあちらでやることが残っているらしい。
それが終わったら仕事のほうに取りかかるので、ずっと日本にいることになるらしいのだが、勤める店が再来月に新規オープンするのでこれから準備が大変なのだという。仕事はこの店のような小さなレストランで腕を振るうようだ。あれから四年ずっと勉強してきたから料理の腕もきっと上がっただろう。
「結婚式の二次会で使わせてもらうの楽しみにしてるわ」
「ああ、スタッフ全員で祝わせてもらう」
片平の結婚式の二次会は、優哉が勤めるレストランで行うようだ。店は十二月初めにオープンらしいので、片平のパーティーが一番初めの大きなイベントになるのか。
「優哉が働いてるところ、早くみたいな」
店がオープンしたらこっそりと訪ねて行ってみようか。どんな感じのお店なのかいまから楽しみだ。
「佐樹さん。しばらくは慌ただしいけど、休みが合う時には一緒に出かけませんか」
「あ、うん! もちろん」
忙しいだろう優哉と一緒にいられるなら願ってもないことだ。それにこっちに彼が帰ってくるとなると買い揃えたいものも多いし、二人で出かけられるのはありがたい。
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