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第1064話 始まり 7-4
「うん、今日はお祝いみたいなものだしね」
会計は素早く峰岸がカードで済ませた。まさかおごってもらうことになるだなんて思っていなかったから少し戸惑う。けれど片平や三島の押しの言葉もあり、ここは素直に受け入れることにした。またどこかで集まった時にごちそうしてあげればいいか。そう思って優哉を振り返ったら、僕の目を見て小さく頷いてくれた。きっとまた近いうちにこのメンバーで集まることはあるだろう。
「じゃあ、みんな帰ろうか」
店を出るとそれぞれ帰路の確認をする。片平や峰岸は最寄り駅の沿線らしく、ここから駅まで十分とかからないので歩いて行くという。けれど僕と優哉は少し遠いので、乗り換えて移動しなくてはならない。なので三島が車でマンションまで送ってくれるようだ。駅まで一緒に歩いてもよかったが、通り道だからと言われ素直に甘えることにした。
「今度また車出す時は僕が運転するぞ」
「え? あー、そうだね。飲みの時はお願いしようかな」
今日は車の運転で飲めなかった三島だけれど、お酒はそこそこ飲むのを何度か一緒に食事をして知っている。どうせ僕は飲めないのだし、代わりに運転したほうが理にかなっているだろう。
「それにしても片平も峰岸も強いよな」
「あの二人はいまのところ二日酔い知らずだね」
「そうなのか。今日もかなり飲んでたしな」
今日は片平と峰岸で一人一本ずつワインを空けていたはずだ。いつもより飲んでる印象は強かったが、それでも少し饒舌になったり陽気になったりするくらいで、酔っ払ったという感じは見られなかった。二人の底知れなさに驚くばかりだ。しかしなんだかんだと僕の周りは酒豪が多い気がしてきた。まったく飲めないので付き合えないのが少し残念だ。
優哉とも二人でお酒を酌み交わしたりしたかったな、なんて思ってしまった。
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