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第1065話 始まり 8-1
店を出てから僕の自宅マンション近くに着いたのは二、三十分くらい経った頃だ。道が空いていることもあり想像以上にスムーズにたどり着いた。三島と話をしながらだったから、体感時間もあっという間だ。
「あ、三島。マンションじゃなくて、駅前で下ろしてくれ」
「オッケー、そこの脇に停めるね」
ウィンカーを出してゆっくりと路肩に車が止まる。マンションの前ではなく大通りで車を停めてもらった僕たちは、車に積んでいた優哉のキャリーケースを下ろして歩道へと移動した。三島は助手席の窓を開けて僕たちを見上げる。
「二人とも今日はゆっくり過ごしてね」
「ああ、三島もお疲れ様。またみんなで食事でもしよう」
「うん、そうだね。あー、なんだか二人が一緒にいるとこっちまで安心するなぁ」
僕たちが並んでいる姿を微笑ましそうに見つめていた三島は、しばらくすると満足したような笑みを浮かべる。優しい視線を向けてくれる三島に小さく首を傾げたら、今度は楽しげな顔をして小さな笑い声を上げた。
「西やんも優哉も、ようやく一緒にいられるんだね。よかった」
「心配かけたな」
「ほんと、たくさん心配したよー。でもいつかきっとこの日が来るってわかってたから、いまは嬉しいかな」
三島はもちろんだが、片平も峰岸も、優哉が僕の元を離れて時雨さんのところへ行くと聞いた時はひどく驚いていたし、怒ってもいた。僕に心配をかけたあげくに一人残していくなんてなにごとだって、ものすごい優哉に説教していたっけ。その剣幕には優哉だけじゃなく僕まで驚いた。
だけど三人の心配は痛いほど伝わってきたし、すごくありがたかった。僕のことを僕以上に考えてくれているのが感じられた。だから優哉も三人に頭を下げて謝った。そして必ず帰ってきて、僕を幸せにするからって言ったんだ。
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