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第1066話 始まり 8-2

「優哉、ちゃんと約束守ってよ! 西やんを幸せにしてね」 「もちろんだ」 「うん、信じてるよ。それじゃあ、西やんも優哉もまたね」  優哉の言葉に満足げに頷いた三島は、至極嬉しそうに笑って手を振った。 「ああ、またな」  振られた手に片手を上げて返すと、三島は車のエンジンをかけて颯爽と夜の街を走り抜けていった。その車の姿が見えなくなるまで見送った僕たちは、駅前にあるスーパーへと寄るべく足を進める。家に帰ってもろくな食べ物がないので、優哉が食べる食料を買って帰らなければ、朝ご飯の用意も難しいのだ。食パンくらいはあるけれど、それしかないと言ったほうがいいかもしれない。 「外食が多いんですか?」 「うん、まあ多いかな」 「またお昼はお弁当作りますね」 「ありがとう」  くすぐったいやり取りがすごく懐かしい気持ちになる。それに一緒に買い物をするのがとても久しぶりで、それだけでなんだかちょっと気分がよくなってしまう。カートに乗せたカゴに言われるままに食材を入れていく。そんな些細なやり取りも、優哉が泊まりに来ていた時はよくしていた。少しばかり真剣な横顔を見つめていると、自然と笑みが浮かんでくる。 「こんなもんですかね」 「思ったより買ったな」  あれこれとカゴに入れたものを会計すると意外と量があった。ビニール袋二つ分の食材をそれぞれ片手にぶら下げて、僕は思わず笑ってしまった。一人だったらこんなに買い物することはそうそうない。しかし二人分の重みと思えば少し口元が緩む。二人きりになってますますそんなことばかり考えてしまう。 「佐樹さんご機嫌だね」 「そうか?」 「両手が塞がってなかったら抱きしめたいくらいに可愛いです」 「恥ずかしいこと言うなよ」  緩んだ頬を誤魔化すために口を引き結んだけれど、優哉の笑みを見たらその力も抜けてしまった。

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