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第1070話 始まり 9-2
相変わらず優哉の作るきんぴらは美味しい。
「そういえば向こうにいた時は日本食も作ってあげていたのか?」
「そうですね。洋食よりも喜ばれていたかもしれません。みんな和食が好きでしたね」
時雨さんたちと暮らしているあいだ、食事を作るのは優哉の役割だったと聞いている。毎日大変だがいい勉強になっていると以前手紙に書いてあった。
行く前は不安そうにしていたけれど、いざ行ってみれば大歓迎をされて、帰すのは惜しいと泣きつかれたと言っていた。時雨さんはもちろんだが、祖父母にもかなり可愛がってもらったみたいだ。
「あ、そういえば時雨さんからお前宛てに荷物が届いているんだ」
「え? 時雨から?」
「うん、なんか毎年必ず届いてた。今年も春に届いたぞ。ちょっと待ってろ」
不思議そうに首を傾げる優哉は届いている荷物に心当たりはないようだ。持ってきたほうが早いかと、僕は寝室とは別にあるもうひとつの部屋へと向かった。
長らく客間として使っていたこの部屋は、優哉用の書斎にすることにした。勉強に使う本や資料なども多いと聞いていたので、優哉が帰ってきたら机や本棚を買いに行こうと思っていた。片付けてなにもなくなった部屋には段ボールが一箱置いてあるだけだ。僕はそれを持ち上げると、またリビングへと戻っていった。
「これなんだけど」
見た目は段ボール一箱で一抱えほどだが、三つある荷物はそれぞれに重かった。正方形で厚みは五、六センチほどだろうか。厚手の紙で丁寧に包装されていて中身はまったくわからない。
リビングのテーブル脇に段ボールを下ろすと、優哉はキッチンを片付けてこちらへやって来た。
「優哉が日本へ帰った時に一緒に開けてくれって、時雨さんからの手紙には書いてた」
「なんだろう、あの人は意外と予想外のことするからな」
段ボールから取り出した三つの包みをテーブルの上に置いた。包みには手書きで西暦で年が書いてある。
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