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第1073話 始まり 10-1

 伝えたいことはたくさんある。僕の中にいっぱい詰まった優哉への気持ち。四年半分の想いはきっとすべて伝えるには時間が必要だ。でもこれから先、優哉はずっと隣にいてくれる。そう思うと傍にいる限り伝えていけるのだと、なんだか幸せな気持ちになれた。伝えきれないもどかしさも、いつかちゃんと伝えられたらいい。  もう後悔しないように自分の気持ちに正直に、一つ残らず言葉にしていこう。すれ違って胸を痛めたあの日を繰り返さないように。そうしたらもっと僕たちの距離は近くなる気がする。 「優哉は時雨さんにそっくりだけど、おじいさんとおばあさんにも似てるな」 「そうですか?」 「うん、ほらこの笑い方とか、目元とか」  写真の中にいる優哉の家族はみんな優しい笑顔をしていて、面差しが彼によく似ていた。なに気ない仕草や表情を見るだけで、彼らが本当の家族なんだとわかる。  母親に会った時はそんな風に思わなかったから、優哉は父親によく似たのかもしれない。話を聞くだけでも優哉の父親は優しそうな印象だった。祖父母も穏やかそうな人たちだし、きっとみんな心根が温かいのだろうな。  それは優哉を見ているとすごく感じる。みんなに大切にされて、愛されて、だからいままっすぐとした強い目をしているんだ。 「お前が大事にされているのを見ると、僕もなんだか幸せな気持ちになる」 「佐樹さん?」  写真を見ていたらふいに視界がぼやけた。鼻をすすり俯いたら、優哉が心配そうな表情を浮かべて僕の顔を覗き込む。その視線に僕は恥ずかしくて、誤魔化すように笑みを浮かべてしまう。 「あ、悪い。なんか嬉しくてさ」  ちょっとあまりにも嬉し過ぎて感極まった。写真の中にいる優哉の表情を見るだけで、胸が熱くなるほどだ。離れていた時間は無駄ではなかった。あの時迷わずに背中を押して本当によかったと思う。

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