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第1074話 始まり 10-2
心から慈しんでくれる家族――これから先も変わらないだろう愛を与えてくれる人たち。優哉に心から笑い合えるかけがえのない家族ができたのだ。
「よかった、お前に家族ができて嬉しい」
「佐樹さん」
こらえきれずにあふれた涙がこぼれ落ちた。次から次へとあふれるそれはなかなか止まらなくて、優哉が優しく指先で拭ってくれた。そして肩を抱き寄せて彼は僕を腕の中に閉じ込める。そんなぬくもりを感じてますます涙腺が緩んでしまう。
「お前が幸せでよかった」
震える声でそう言ったら、かき抱くように強く抱きしめられた。それは少し苦しいくらいの抱擁だけれど、いまはそれさえも幸せに感じてしまう。腕を伸ばして抱きしめ返せば、胸元から少し早い心音が感じられた。優しい音――それはいまも昔も変わらず僕を安堵させてくれる。
「佐樹さんありがとう。佐樹さんが背中を押してくれたから、俺は迷わずにたくさんのものを得ることができた。いくら感謝してもたりないくらいだよ」
「僕は大したことはしてない。お前が頑張った成果だよ。お前がその手で掴んだんだ」
優哉の両手が僕の髪を優しく梳いて撫でる。視線を持ち上げて彼を見つめれば、ついばむようにそっと口づけられた。愛おしいという気持ちがじわりと胸に広がって、また少し涙がこぼれてしまう。
「俺が愛している人があなたでよかった」
「そんなこと言われたら、泣くしかできないだろ」
愛してくれるのが彼でよかったと僕もそう思う。優しくて温かくて、どんな時でも人を思いやれるまっすぐな心根を持つ人。そんな彼が僕を想ってくれていることが嬉しくてすごく幸せを感じる。
涙の止まらない僕の頬に口づけて、何度も「好きだよ」なんて囁くから、胸が甘く締めつけられてたまらない気分にさせられる。
「佐樹さんがいてくれるから、俺は幸せでいられるんだと思う。向こうで頑張れたのも、佐樹さんが待っているって思ったから」
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