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第1081話 始まり 12-1
目的の場所は電車に揺られて三十分、駅からは徒歩十分と少しくらいだろうか。のんびり二人で話をしながら移動する、なに気ないそんな時間が嬉しくてずっと僕の顔は緩みっぱなしだ。
相変わらず人目を引く優哉は色んな視線を振り返らせていたけれど、僕が不満そうな顔をするたびにそっと手を握ってくれた。だからそのたびに優越感に浸ってしまい、もやもやすることがなかった。肩を寄せて歩くだけで幸せな気持ちになる。
「どこから見ようか」
目的地であるショールームにたどり着くと二人でフロアガイドを見上げる。十階まである店舗の中はリビングやダイニング、ベッドルームなど様々なテーマごとに分かれいるようだ。目的はソファやベッド、それと優哉の書斎の家具だから階ごとに見て回ることになる。
「メインはベッドとソファだし、下から見ていきます?」
「うん、えーと、寝具のフロアは四階か」
ソファが置いてあるリビングの家具は六階、デスクや本棚がある階は七階だからあとは順に上がっていけばいい。エレベーターを呼んで、まず僕たちは四階へ向かうことにした。
「あ、仕事のメールを返してもいいですか?」
「ああ、いいよ」
エレベーターの中でふいに携帯電話を取り出した優哉がすまなそうにこちらを見る。それに頷き返しながら、僕は彼の真剣な横顔を見つめた。こんな風にじっくり顔を見るのは久しぶりな気がするが、よくよく見れば目の下にうっすらクマができている。
少し疲れが溜まっているんじゃないだろうか。勤める店が新規オープンだから、メニューなどを一から決めなくてはいけないようで、家でも毎日遅くまでパソコンに向かい打ち合わせしていた。眠るのはいつも僕よりも遅いから睡眠時間は短いのかもしれない。
「佐樹さんどうしたの? そんなに難しい顔して」
「いや、いまからそんなに忙しくて大丈夫なのかと思って」
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