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第1083話 始まり 12-3

「そっか、そうだな。寝ている時に起こしてしまうのはやっぱり気になるもんな」  寝室は十畳ほどはあるのに、いまはセミダブルのベッド一つと僕の机、あとはサイドボードくらいしかない。その机も書斎へ移すことになっているので、広さにはだいぶ余裕がある。やはり購入後のことを考えると確実なほうを選ぶのがいいかもしれない。 「セミダブルならいまのと大きさ変わらないし、一緒に寝たくなった時はくっついて眠れますよ」 「じゃあ、やっぱりそっちのほうがいいかな。大きいより少し狭いほうがいっぱいくっつける」  いつも一緒に寝ると僕は優哉にぴったりとくっついてしまう。抱きついて腕の中で寝ると、心音がよく聞こえてすごく落ち着くのだ。それを考えるといまのサイズは決して狭くはなかった。僕にとっては、だけど。  サイズが決まればあとはフレームやマットレスを選ぶだけだ。二人であれこれ意見を出し合いながら一つずつ見て回る。一緒に新しいものを買うのは初めてだから、なんだかすごく楽しくてわくわくする。二人でベッドに寝転んで寝心地を確かめたり、フレームの収納力に驚いてみたり、フロアの端から端まで歩いて回った。 「こうやって家具を一緒に選んでると、これからも一緒にいられるんだって実感するな」 「佐樹さんとこの先も暮らせるんだと思うとすごく幸せな気持ちです」 「ああ、僕もそう思う。ここまで長かったしな」  一緒に暮らそうと初めて言った日から随分と時間が経った。あの時の僕は優哉の帰る場所になれたらいいなと思ったんだ。そして叶うなら家族になりたいと願った。 「一緒に暮らすって、家族かな?」 「俺と佐樹さんはもう家族でしょう」 「そうか、じゃあ僕の願いは叶ったんだ」  当たり前のように返事をしてくれる、それだけで胸の中がじわりと温かくなった。

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