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第1086話 始まり 13-2
「佐樹さんがこういうお店を知ってるのは少し意外でした」
「うん、僕だけじゃ見つけられないな」
正直自分はおしゃれさとは無縁なところにいるので、優哉の言葉に異論はない。僕一人でこんな店を探し出すのは難しいだろう。探し出したとしてなかなか行こうとは思わないかもしれない。
「佳奈姉もこんな感じの輸入雑貨の店をやってるんだけど、食器とか揃えるならおすすめだって言われたんだ」
次女の佳奈は輸入雑貨に関してはかなり詳しい。実家で使っている食器も佳奈姉が揃えたものだ。色も形もシンプルだけれどすごく扱いやすくて、買うならそんな感じのものがいいなと思ったので、今朝電話をして聞いてみた。ほかにも色々教えてもらったのだが、ネットで見た感じここが一番よさげだった。
「行ってみよう」
青色に映える真っ白な扉を引き開けると、扉につけられたドアベルがカランと軽やかな音を響かせる。その音と共に「いらっしゃいませ」と店の奥から声が聞こえた。
「結構広いですね」
「うん、それに思ったよりもたくさんあるな」
店の中は優哉の言うように外から見るよりも広く感じた。空間に窮屈さはなく、棚と棚の合間も二人並んで見てもゆっくり見られる丁度いい広さだ。外は青色だったけれど中は淡いクリーム色で統一しているのか、壁紙や木製のラックも清潔感のある優しい色だった。
そこに丁寧に並べられた食器は、派手さのない落ち着いたデザインのものばかりだ。
「柄のあまりないシンプルなのがいいな。優哉はどの皿とかがいい?」
「デザインは佐樹さんが選んでくれていいですよ」
「うーん、そうだな」
店内をぐるりと周り、陳列されている食器を品定めしていく。どれもおしゃれで機能的なものが多い。描かれているデザインや使われている色もすごく洗練されていて、心惹かれるものばかりだ。
「じゃあ、これがいいかな」
目移りしそうな商品を見つめてしばらく悩んだけれど、その中でも一番シンプルなものを僕は手に取った。
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