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第1087話 始まり 13-3

 真っ白だけれど縁にデザインが少し施されているものだ。あまり柄があるものだと使っているうちに飽きてくるので、とにかくすっきりとした実用的なものがよかった。 「じゃあ、あとはサイズですね」 「とりあえずよく使うだろうものを揃えて、足りないのは次に買い足そう。皿の種類は優哉が選んでくれると助かる」 「わかりました」  優哉は食器の並ぶ棚をじっと見つめて考え込んでいたが、ディナープレートやパスタ皿、サラダボウルにグラタン皿など、一つずつ必要な皿を選別していく。普段から料理をしているから、どのシーンでどんな皿が必要かすぐにわかるのだろう。 「プレートもう一枚欲しいですね」 「うん、いいぞ」  真剣に選んでいる横顔を見ながら思わず笑みが浮かんでしまう。こうしてなに気ない買い物を一緒にするのはすごく楽しい。二人の時間を共有しているからだろうか。きっと新しいものを揃えた中で暮らすのは、もっと楽しいに違いない。 「買うもの決まったか?」  じっと棚を見つめていた優哉が顔を上げて振り返った。その視線に首を傾げてみせると、小さく頷く。 「はい、注文してきます。食器は俺からプレゼントさせてください」 「え? 気を遣わなくていいのに。僕が欲しいって言ったんだし」 「二人で使うものは、できれば一緒に揃えていきたいんです」  照れくさそうに笑う優哉は僕の手を優しく握った。思いがけない言葉と、まっすぐな優哉の眼差しに少し驚いたけれど、もしも逆の立場だったとしたら僕も同じように思ったかもしれない。当たり前のように僕がソファやベッドを買い揃えてしまったが、優哉も二人で始める時間を形に残したいと思ってくれたのだろう。昔とは違ってもう優哉も大人だし、僕が年上だからってなんでもするのはよくないのかもしれない。 「うん、わかった。優哉に任せるよ」 「ありがとうございます」

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