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第1089話 始まり 14-1
優哉が案内してくれる場所は少し移動したところにあるようだ。しばらく電車に揺られ、自宅マンションのある駅から三つ過ぎた場所で降りた。初めて降りるが、何度も通り過ぎたことのある駅だ。
改札を抜けて外に出ると、コーヒーショップやパン屋、スーパーなどがあった。通りには商店も立ち並んでいて、夕方と言うこともあり買い物をする人たちが行き交っている。各駅停車の小さい駅だけれど雰囲気のいい街だ。
「もう少しで着くので」
「うん、大丈夫だ」
先を歩く優哉の背を追いかけて足を進める。商店が並んでいた通りを抜けると、そこはもう住宅街だった。猫がのんびり歩いている静かな道を二人で肩を並べて歩く。人通りも少ないのでそっと手を伸ばして隣にある手を握ってみた。少し驚いたように振り返ったけれど、優哉はその手を握り返してくれた。
「あ、あそこの角を曲がったところです」
駅から十分くらい歩いたところで、優哉が道の一角を指さした。そこは一見すると、曲がり角があることに気づかないかもしれない場所だ。その先は生け垣に挟まれた小道になっていて、足元には白い石畳が敷かれている。
「私有地?」
辺りを見回すと一戸建ての家が並んでいる。ということはこの先も住居だろうか。道の入り口には駐車スペースもあった。
「奥まったところにあるんだな」
「初めて来るとちょっと迷うかもしれないですね」
大人二人、並んで歩くのが丁度くらいの細い道を抜けたら、花壇のある小さな庭と、こぢんまりとした白い家が目の前に現れた。玄関ポーチや大きな出窓があるその家は、真っ白な外壁とオレンジ色にも見える赤の三角屋根がすごく印象的だ。その外観はどこか素朴で、外国の片田舎にありそうな佇まいだと思った。家の周りが生け垣に囲われているから、なんだか隔離された空間みたいで、ここが住宅地の真ん中であることを忘れてしまいそうだ。
「中にどうぞ」
優哉は上着のポケットに入れていたキーケースから鍵を取り出すと、躊躇いなく目の前の扉を解錠した。
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