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第1090話 始まり 14-2

 ゆっくりと開かれた扉の向こうはとても明るく、玄関スペースはどうやら二階まで吹き抜けになっているようだ。 「ここってお店?」  外に看板らしきものはなかったが、吹き抜けになっている玄関には小さなレジカウンターがあった。その後ろには二階へと続く真っ白な階段がある。そして艶のある綺麗な板張りの床で繋がる階段を挟んだ向こうは、どうやら広いフロアになっているようだ。テーブルや椅子がいくつも配置されているところを見ると、ここは住居ではないのだろう。 「本当はディナーに招待できる状態で来てもらおうと思っていたんですけど、佐樹さんに心配かけてるみたいだったから」  手を引かれて店の奥へ案内される。レジカウンターの横を通り過ぎフロアに行くと、四人掛けのテーブルが五つあった。奥にはカウンターテーブルもあり、椅子が六脚並んでいる。どれも真新しいのか保護ビニールがかけられていた。カウンターテーブルの向こうはオープンキッチンになっていて、厨房の中がよく見える。 「もしかして優哉が働く店?」  ぐるりと視線を巡らせば見渡せるほどの小さな店だが、なんだかとても居心地のよさそうな雰囲気だ。ぬくもりを感じさせる柔らかなクリーム色の壁紙とレースカーテンが引かれた大きな出窓。窓から差し込む光は明るく、壁紙の優しさと相まってとても落ち着いた印象を受ける。そして大きなシーリングファンが備え付けられた天井は高さがあり、店内を広々とした空間に見せていた。  のんびりここでランチやディナーなどをしたら気持ちよく過ごせそうだ。 「正しくは、ここは俺がこれからオープンさせる店です」 「え?」  なに気ない声で告げられたその言葉を聞いて、驚きをあらわに優哉の顔をじっと見つめてしまう。そんな僕の表情に彼は至極優しい笑みを返してくれた。 「え? 店に勤めるんじゃなくて、優哉がオーナー? もしかしてお前の夢、叶うの?」 「時雨にかなり借りを作りましたが、来月の頭には無事にオープンさせられそうです。どうですか、この店」

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