4 / 242
第4話
*
電車に乗って二駅先。
駅を出てすぐ近くに、女の子に大人気のおしゃれなカフェがある。
「こんにちは」
裏口から入ると、ちょうどパンケーキのお皿を両手に持った店長の御坂さんがいた。
「こんにちは。今日も早いねー、心君」
そう言って微笑む御坂さんは、話し方がおっとりしていて、男の人なのにすごく美人さんだ。
「今すぐ入れるかな?お客さんたくさんいらっしゃってるから、そうしてくれるとありがたい」
「はい、分かりました」
御坂さんの言葉に頷いて、急いで更衣室に向かった。
どうして俺がこんな素敵な場所で働けているかと言うと、募集チラシを見ていたら、御坂さんに声をかけられたから。
最初は警戒したけど、いざ働いてみると御坂さんや他のスタッフさんはすごく親切だし、お店は流行ってるからお給料も良くて、俺にはもったいないくらいのお仕事だった。
一つ不満を言うなら、何故かスタッフの中で俺だけに支給されたこの可愛いフリルの制服ぐらいだけど、そんな贅沢を言ったらきっとバチが当たってしまう。
(頑張って、せめてこのお店の恥にならないようなお仕事をしなきゃ)
そう息巻いて更衣室を出た矢先、視界がグラリと歪んだ。
「‥‥‥っ。痛っ‥‥‥」
頭が痛んでますますバランスが取れなくなった俺は、派手な音を立てて倒れ込んでしまい、そのまま頭を押さえるようにうずくまる。
(ど、しよ‥‥‥痛い‥‥‥)
「心君、どうかした?‥‥‥!?心君!?しっかりして!!」
だんだん意識が遠のいて、御坂さんの呼ぶ声が聞こえたと同時に視界が真っ黒になった。
ともだちにシェアしよう!