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第7話
*
先生の車で家まで送ってもらうことになった。
鞄は先生が持って行ってしまい、手ぶらで病院のエントランスで待つこと数分、一台の薄いブルーの軽自動車が俺の前に止まる。
「待たせてごめんな。具合大丈夫か?」
「は、はい」
車から降りた先生が、後部座席のドアを開けてくれた。
先生の爽やかな雰囲気によく似合っている車は、ぴかぴかしてて、何だか格好良い。
そんな気持ちが表情に出てしまっていたのか、先生は「車好きなの?」なんて言いながら可笑しそうに笑って、俺の背中を優しく押した。
「ほら、乗りな」
「失礼します‥‥‥」
俺が車に乗ると、先生は「閉めるよ」と言ってドアを閉めてくれた。なかを見渡すとずいぶん綺麗にしてあって、何だか恐縮してしまう。
「横になってて良いよ。まだ完全に治ってないだろ?」
運転席に座って、俺のことをミラー越しにちらっと見た先生が、車を発進させながら、またもや俺を気遣ってくれた。
「そんなこと、ないです」
本当は先生の言う通り、少し眠気がある。
けど、人様の車で寝るなんて失礼なこと出来ないから強がった。
「こーら、無理するの禁止。お医者さんもしばらく身体を休めてって言ってたし。って言っても、すぐ家着くけどな。それまでは寝ちゃいな」
流れていたラジオまで消されてしまい、先生もそれっきり話さなくなった。静かな空間で、適度に身体が揺れるから、徐々に意識が遠のいて行く。
そんななか、夢うつつに先生の襟首を眺めていた。
誰かが運転する自動車に乗るのなんていつぶりだろうか。
(不思議だなぁ、あんなに苦手だったのに。今は何だか、先生がいてほっとしてる‥‥‥)
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