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第11話 高谷広side

* 腕の中で眠った心を静かに横たえて、布団をかける。 「お疲れさん」 「‥‥‥んぅ」 撫でると微かにすり寄ってきた、少し癖っ毛の黒い髪。それがなんとも可愛くて、ついもう一撫でしてしまう。 (頑張ってたんだなぁ) この小さい身体で、毎日毎日。一人で一生懸命に頑張ってた。それこそ倒れてしまうくらいに。 今までは少し距離があった関係だけど、せっかくの従兄弟なんだからこれからはもっと頼ってくれたらと思う。 (さて、と) ベッドから腰を上げて、茶碗を持ってそっと部屋を出る。 二階から一階へ移動して足を踏み入れたリビングは、驚くほどに殺風景だ。心自身の部屋も物が少なかったけど、ここまでじゃない。それくらい、ここは生活感というものが全く感じられなかった。 茶碗を置きに来たこの台所も、明らかに食器や食材が少なくて、かろうじて米と簡単な調味料があるだけだった。これだと栄養不足だったのも頷ける。 (掃除は行き届いてるみたいだけど‥‥‥) リビングだけじゃない。玄関から廊下まで全部綺麗にしてある。 きっと心がやっているのだろう。いつ叔父さんが帰ってきても気持ち良く過ごせるように、って。 (心はこんなにも叔父さんを待っているのに) 理由は大方分かっているけど、納得するわけないはいかない。 隅に置いておいた鞄からスマホを取り出して操作する。着信履歴の一番最新の番号をタップすると、数コールで相手が出た。 『はい』 俺の叔父さん。 心の親父さんだ。

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