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第41話 高谷広side
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達した瞬間に眠ってしまった心を、ゆっくりとベッドに横たえた。布団をかけると「や……」と眉をひそめて唸った心に、心苦しくなる。
「……ごめんな」
罪悪感に苛まれ、赤い目元を撫でてから寝室を後にした。暗がりの中、リビングにあるソファに沈むように腰を下ろし、掌で目を覆った。自分の犯した過ちから、逃れたいがための行動だった。
心はまだ何も知らない子どもだ。そんな子にとんでもないことをしでかしてしまった。
『先生、おねがい……』
あの日、心が俺にすがった日。
初めはただ、力になりたいだけだった。担任として、従兄弟として、あの子に泣いて欲しくないだけだった。
ただそれだけだった感情が、徐々に変わっていってる。
『い……行ってきます』
だったそれだけの言葉で幸せそうにするのが、健気でほっとけなくて。
『先生も、行ってらっしゃい、です』
俺自身も、こんなに幸せな気持ちになるのは初めてで。
『……だから、今まで頑張った分の貯金のおかげ、ですね』
その言葉がすごく嬉しくて。救われて。
『せんせっ、俺っ、こんな……っ』
羞恥心に涙を流す心に、胸が熱くなった。
従兄弟だから問題ないと、自分の中で勝手に理由をつけて、無垢なあの子に触れてしまった。
『あ、やぁ、や……せんせぇ……』
潤んだ瞳。真っ赤に染まった頬。上ずった切ない声。その全てを鮮明に憶えている。
最低なことに、自分は心のあの姿に反応してしまったのだ。
「これはヤバイ……」
ありえない感情。もってはならない感情。
俺はこれからどうすればいいのだろう。
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