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第42話

* 「ん……あ、さ……?」 身体を起こして辺りを見回すけど、部屋の中に先生の姿はなかった。 (先に起きたのかな……) いつもより妙に身体がスッキリしている。 何か重大なことがあった気がするけど、寝ぼけた頭のせいでなかなか思い出せない。それどころか、どうやって寝室に来たのかさえも曖昧だ。 (昨日は……先生と……せ、んせい、と……) この家に帰ってきてから、寝支度を終えるまで。一生懸命に記憶を辿ると、急に糸が繋がった。 「……っ!!」 鮮明になった記憶に、顔が一気に熱くなる。 そうだった。昨日は一緒に寝るの時に戸塚君の言葉を思い出して、それで……色々やらかしてしまった。 (うあぁ……どうしよう……) じわぁと目頭が熱くなる。 だって、自分のあそこを先生に見られて、触られて、気持ち良くなってしまった。その罪悪感は凄まじい。 先生に汚いと思われたかもしれない。気持ち悪いと思われたかもしれない。一緒に暮らしたことを後悔されてしまったかもしれない。 (出ていけって言われたらどうしよ……) そう思うと、冗談抜きで死んじゃいそうなほど胸が苦しくなって、呼吸もしにくくなる。 こんなに幸せな生活を手放したくない。何よりも、先生と離れたくない。けれど、うまく接する自信もない。 (ほんと、どうすれば……) ぎゅうっとシーツを握りしめて自己嫌悪に陥っていたが、ふと大変なことを思い出した。 「え……待って」 先生はどこにいるのだろう? 本来はここに居るはずの先生がいない。かといって、リビングから音が聞こえるわけでもなく。 「……ぁ」 嫌な予感がする。 俺は急いでベッドから降りて寝室を出た。 寝室とリビングを繋ぐドアに背を向けて配置されているソファ。そこから黒い髪がのぞいていた。もちろんその正体は高谷先生だ。 (どうしよ……っ) 迷惑をかけた上にこんな所で寝せてしまった。 思わず後ずさって扉に身体を当ててしまい、ドンっと音が鳴った。その音に先生の頭がピクリと動く。ソファから立ち上がった先生の顔がわずかに疲れているのは、決して気のせいではないだろう。 「……おはよ、心」 「あ……お、お……っ」 おはようございますって返したいのに、先生の顔を見たら昨日のことが鮮明に思い出されてしまって、言葉が出ない。 何よりも先に謝らなければならないのに──。 俺がみっともなく固まっている間に、先生が近づいてくる。一歩距離が近づくごとに、部屋の中の緊張が高まっていった。 「心?ごめんな、昨日は──」 「……やっ!」 手を伸ばされた瞬間、俺は思わず先生の手を振り払っていた。乾いた音が部屋に響き渡ったのがその証拠だ。 「あ……ちがっ」 「心、大丈夫。分かってるから、落ち着いて」 「ご、ごめっ、なさ.......っ」 先生は俺を助けてくれたのに。俺は嫌だったなんて思ってないのに。先生を拒否する資格なんかないし、そんなのしたいとも思っていないのに、身体が言うことを聞いてくれない。 「〰︎〰︎っ」 「し、心……っ!?」 もうどうすることも出来なくて、俺は部屋から逃げ出した。
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