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第76話

お風呂から上がると、洗濯機が動いていて、その上にスウェットの上下セットと新品の下着が置かれていた。全部自分のよりは大きいけれど、スウェットに腰ひもが付いていたおかげで、ずり落ちることはない。 部屋に向かうと、戸塚君はベッドを背にして床に座りながら、スマホを操作していた。服はTシャツ短パンに着替えていて、首にはタオルが掛かってる。 「あの、戸塚君……お風呂と服……ありがとう」 「……」 チラっとこっちを見たと思ったら、またスマホに夢中になってしまった戸塚君。返事をしてくれないほど、お怒りのように見える。 「ご、ごめんね……戸塚君も濡れてたのに、先にお風呂入っちゃって……戸塚君も早く入って──っ!」 立ち上がった戸塚君が近くまで寄って来て、ペタっと俺のほっぺに手を触れた。いきなりのことで驚いて、俺はその場に固まってしまう。 「戸塚、君……?」 「ちゃんと暖まったのかよ」 「え……」 その言葉で、やっとその行動の意味を理解した。 (あ……体温、確かめてるのかな……) 戸塚君はやっぱり優しい。自分は半袖なのに俺には長袖の服を貸してくれるし、いつもこうやって気に掛けてくれる。それがありがたいし、申し訳ない。 「う、うん。だから、戸塚君も……」 「俺は拭いたからいい。つーか腹減った」 ほっぺから手を離した戸塚君が、すぐそこの台所の棚を開けて箱を取り出した。 「わ、すごい量……」 そこには驚くほどいっぱいのカップ麺が入っていた。戸塚君はいつもこれを食べているのだろうか。 「ラーメンうどん蕎麦」 「え?」 「どれ?」 「えっと……ら、ラーメン?」 「……特別に新発売食わせてやる。感想言えよ」 戸塚君は「不味かったらもう買わねえ」って本音を漏らして、お湯を沸かし始めた。 (毒味的な感じ……?) 「が、頑張るね……」 これだけお世話になったのだから、少しでも役に立とうと意気込むと、戸塚君に「……アホ」って呆れられてしまった。

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