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第102話
(先生のお母さん……!?)
ということは、お父さんのお姉さん……俺の叔母さんに当たる人。
俺は慌てて頭をペコっと下げた。
「あ、あのっ……俺、望月心って言います。先生には、いつもお世話になってます」
顔を上げると、叔母さんは驚いた顔をしていた。その表情は、少しだけ先生に似てる。
「ええっ、じゃあ貴方、心君!?」
「は、はい」
「あらぁ、大きくなって!ずいぶん美人さんに育ったのねぇ」
叔母さんは、ペタペタと俺の体を触わりながらしみじみと言った。
(大きくなって……ってことは、昔に会ったことあるんだ)
俺は覚えていないけど、ちゃんと昔は親戚同士の交流が会ったんだなって……ちょっとホッとした。
「広相手に困ったことはない?もしあったら、なんでもおばさんに相談してちょうだいね」
先生と同じで、優しい叔母さん。微笑んでもらうと不思議と心が落ち着いて、心地良い。
(でも……困ることなんかないしな……)
先生には本当に優しくしてもらっている。
「あ……」
強いて言えば、ひとつだけ。ちょうど今、困っていることがあった。
(せっかくだし聞いちゃおうかな……)
「じゃあ、あの……」
おずおずと切り出した俺に、叔母さんはニコニコしながら「何かしら」と続きを促した。
「先生の好物ってなんですか……?」
そんな俺の質問に叔母さんは目を瞬かせて、数秒後に口元に手を当てた。視線は俺の持つカゴの中へと向いた。そこには、切れかけた調味料やら日用品やらが入っている。
「あらやだ。あの子、貴方に家事やらせてるの?高校生にそんな負担かけて、あの子ったら……」
若干不穏な空気に、俺は慌てて首を振る。
「いえっ、俺が作らせて欲しいって言ったんですっ」
土曜日は俺のバイトが終わる時間に合わせて、先生が夕食を作って待っていてくれるし、全て俺がやっているわけじゃない。俺がやっているのは、本当に些細なことで、先生にもらっているものの方がはるかに大きい。
何度もつっかえながら、そう訂正すれば、叔母さんは「仲良いのね」とクスッと笑みを漏らした。
「広の好きなもの……そうねえ……あ」
「……?」
首を傾げる俺に、叔母さんは「良いこと思いついた」といたずらっ子のように笑った。
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