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第132話

* 夏休みに入って一週間ほど経った、朝。 今日はバイト先のみんなで海へ行く日。 楽しみすぎて早々に準備を終えてしまった俺は、家の中をウロウロと歩き回り、何度もフローリングモップで床を磨いたりしながら、落ち着きなくソワソワとしていた。 「しーん。おいで」 見兼ねた先生が、ソファに座りながら手招きしてくれる。モップを置いてトタトタと駆け寄ると、腕を引き寄せられ、俺は先生に抱っこされてる状態になった。 「せ、せんせっ?」 びっくりして顔を赤くする俺に、先生が優しく微笑む。その様子は、今日も今日とて相変わらずキラキラ輝いていて、きゅーんと胸が高鳴る。 (カッコいい……) 大好きな先生の顔に見惚れていると、先生はパカっとボトルの蓋を開け、中の液体を手に取った。俺はその動作を不思議に思って、首をコテンと傾げる。 「先生……?」 「日焼け止め。塗ってないだろ?」 「あ……塗ってない……」 (忘れてた……) ハッとした俺に先生は優しく微笑み、手をのばす。 「目、瞑っててな」 「ん……っ」 目を閉じたと同時に、先生の手がペタッと顔に触れ、液が優しく塗り込まれていく。 高校生にもなって自分で塗らないのはどうかと思うが、先生に顔を触られるのが気持ち良くて、俺はついそのまま甘えてしまった。 (だってなんか……可愛がられてる猫、みたいな……) ゆっくりとした手の動きに、思わず喉を鳴らしてしまいそう。こんな風にいつも可愛がってもらえるなら、先生のペットは幸せだと思う。 (すごく、気持ちいい……) 「ふぇっ!?」 変なことを考えているうちに、背中に違和感が走り、思わず声を上げてしまった。 「えっ、せんせ……!?」 顔にあったはずの手はいつのまにかTシャツの中に入り込んでて、終いには捲り上げられてしまう。 「ひゃっ……ぁ、せ、せんせっ……」 背中のくぼみをツーとなぞられ、身体がビクッと震える。液体が冷たいのとくすぐったいので、身体をよじるも、やめてくれる気配が全くない。 「んっ……」 心臓はバクバクで、俺は先生の首に抱きつくような体勢になりなった。変な声が出ないように我慢しつつ、パクパクと口を開ける。 「こ、これっ、日焼け止めっ……です、よね?」 「うん。心の綺麗な肌が荒れないように」 「……っ。で、でも、その……なんかっ」 (手の動きが……) ……えっちな気がする。俺がピクっと震えちゃうような、そんな動き。 そう思うけれど、先生は真面目にやってくれてるのかもしれない。だから、俺は本音を言えずにグッと口を噤んだ。 「嫌?」 「いや、じゃないけどっ……あのっ、でも、あの……松野君が、これはビーチパラソルの下でやることって……」 「ははっ。なにそれ、松野は相変わらず面白いなー」 先生は可笑しそうに笑った後、耳元で甘く囁いた。 「心のこんな可愛い反応、他のやつに見せるわけないだろ?」 甘くて蕩けちゃうような声。 「なっ……」 そんな先生の囁きに、ボボボッと湯気が出るくらい、顔が熱くなる。 (確信犯だった……!) もう恥ずかしいのと嬉しいのが混ざりに混ざって、複雑な思いでいっぱいいっぱい。俺は羞恥心を紛らわすようにギュウッと先生の首に抱きついた。 (恥ずかしい……) その後も先生の掌は、依然俺の背中をなぞり続けた。塗り終えられる頃には、身体はふにゃふにゃになって、もう支えなしでは座っていられなかった。 「前はどうする……?」 グッタリとした俺の耳を先生がスルリと撫でる。 相変わらずの色気全開の声にギュンと心臓が跳ね、俺は顔を真っ赤に染めながら、慌ててボトルを奪い取った。 「……っ!ま、前は自分でやりますっ!」 (もうっ、先生のえっち……!)

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