135 / 242
第135話
「えっえっえっ!望月だ!」
「わっ」
山田君は俺の姿を見た途端、一瞬にして顔をパァッと輝かせて抱きついてきた。俺はよろけつつも、なんとか山田君を受け止める。
「うおー!久しぶり!!」
「ひ、久しぶり。山田君」
「うんうん。つーかマジで!?控えめな子って望月こと!?」
「あ……そっか。じゃあ、もしかして……近所のお兄さんって……」
(尾上さん?)
チラッと見ると、大人同士で挨拶を交わしていた尾上さんが、俺に向かってニコッと笑った。
その表情を見るに、尾上さんは俺たちが同じ高校だと知っていたのだろう。俺はいつも制服でバイトに行ってるから、そうでも全然不思議じゃない。
「やばいやばい!これって運命じゃね!?」
山田君はそんな尾上さんのサプライズに気づくことなく、ひたすら運命だと言いながら、俺をギュギュッと抱きしめた。
「もうマジで嬉しい〰︎〰︎!!」
秘密がばれちゃうのは困るのだけど、俺はついほっぺを緩めてしまう。数日ぶりに会っただけで、こんなにも喜んでもらえるなんて、俺はなんて幸せ者なんだろう。
「ふふ……俺も嬉しい」
山田君の腕がまわっているせいで首が少し苦しかったけど、俺も山田君の背中に回した手にギュッと力を込めた。
だって、本当に嬉しい。夏休み一緒に遊ぼうって約束を、今日初めて果たせるから。
「……っ!望月ほんっっっと可愛い!」
「そ、そんなことないよ……」
「ある!ありまくり!!可愛い!!」
「そ、そんなに言われたら、恥ずかしい……」
「〰︎〰︎っ!!」
この暑いなか、俺たち二人は浮かれに浮かれて、ひたすら抱き合った。徐々に山田君の力が優っていって、背中がそり始める。
(ちょっと辛い、かも……)
背中をプルプルさせながら、ふと先生を見れば、なんだか微妙な顔をしていて。それで俺は、皆を待たせてしまってることに気がついた。御坂さんも尾上さんも、俺たちを見て苦笑いしてる。
(い、いけないっ……)
「あ、あの、山田君そろそろ……っ!」
そろそろ離れなきゃと思い、山田君に声をかけようとした瞬間、後ろからグイッと引っ張られた。
ともだちにシェアしよう!