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第159話 高谷広side R18
「心、ごめん……。不味いだろ……吐いて」
「んんっ……」
いつもは素直なのに、今日のこの子はひと味もふた味も違う。心は俺のを咥えたまま軽く首を振り、俺の願いに反して、コクっと喉を上下させた。
「心……飲んじゃったの……?」
心の口から自身を引き抜いて上体を起こす。口端に光る唾液を拭ってやると、心はトロンとした表情で顔を上げた。
「のみはひは……」
飲みました、と見せてきた口の中には、まだ若干白濁が残っていたけれど、俺が出したのはこんなものではない。それをこの恍惚とした表情で飲むなんて、普段の恥ずかしがり屋とのギャップが激し過ぎる。そんないつもと違う色っぽくて淫らな心に、俺の自身は再び角度を持った。
(けど……これ以上はなぁ)
さすがにこれ以上すると、最後までしないと気が済まなくなるだろう。ここでやめておけ。そう自分を律し、なんとか気を保つ。
「心……とりあえず風呂に……。うがいもしないと……」
「やらぁ……もっと……」
「……っ!」
抱こうとする俺の手をぺちっと可愛らしく払った心が、再びパクッと咥えた。再び柔らかな感触に包まれた気持ち良さで、視界がぐらっと揺れる。
「し、ん……駄目、だって……」
髪を撫でて諭そうとするも、心は構わず顔を上下させた。ジュプジュプ、と次第に水音が大きくなっていく。俺の顔を伺うのを忘れるくらい、その行為に夢中になっているのがよく分かった。
「んんぅ……んっ、んむっ」
「は……。し、ん……」
「んう……ん……ん、ぅ……」
「心……?」
「……ぅ……」
(どうしたんだ……?)
なにやら様子がおかしい。急に動きがゆっくりになった。どうしたのか戸惑っていると、数秒もしないうちに心の身体の力が抜けて、俺の股間に顔を突っ伏した。その瞬間、口から俺のモノが出てしまい、頬に当たったが、それでも心は微動だにしない。
「心っ……どうした?」
突然のことに驚いて、慌てて心の身体を起こす。胸に抱き寄せると、心はスースーと静かに寝息を立てていた。
(寝た、のか……?)
ただ寝落ちたことへの安堵。そして、妙な納得感。
(……なるほど)
いきなりの積極性の理由は、キスマークに加えて、眠気もあったのか。今日は一日中海で遊んだのだから、眠いのも無理ないが、まさか極度に眠いとこんな風になってしまうとは。
「まったく……このかわい子ちゃんは、ほんとに……」
眠たいと甘えたになってしまうなんて、なんて可愛い性格なのだろう。十以上も離れているのに、心には翻弄されてばかり。それくらい、俺がこの子に惚れているということなのだろう。
(寝てくれなかったら、本当に危なかった……)
俺は苦笑を浮かべながら、気持ちよさそうに夢の世界にいる心の頬をムニッと摘んだ。すると、「えへへ……」と微笑まれて、こちらまで表情が緩んでしまう。寝てる時まで可愛いなんて、本当にこの子はどうなっているのだろう。
「こんなに愛されてるのに、妬くなんて馬鹿だよなぁ……」
こんなにも全身で俺のことを好きだと伝えてくれているんだから、嫉妬する必要なんかないじゃないか。そんなことしてる暇があったら、俺もしっかりと応えなければ。変な嫉妬で泣かせている場合じゃない。
スヤスヤと眠る、最愛の恋人をゆっくりと横たえ、慈しむように胸の印をそっと撫でた。
「……ありがとう。大好きだよ、心」
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