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番外編-戸塚君とアホ望月⑦
*律side
「ひゃは!あははははっ!」
夜。再びとっつーと合流した俺は、自室のベッドの上で腹を抱えながら転げ回っていた。
「ひーっ!もうっ、さいっこう!ほんっと、とっつー不憫すぎ!やば!俺のこと、恋人!恋人って言ったって!?」
どうしてこんなに笑っているのかと言うと、あのおどおどちゃんのせい。
あのかわいこちゃんったら、自分に惚れてる男にアクセサリーをプレゼントしただけじゃなく、『恋人』の俺にもって、お揃いのものをくれたらしい。
(セフレを恋人って!)
どんだけ無知で純粋な子なんだろう。本当に高校生かと疑ってしまうレベルだ。
「……チッ。いい加減にしねえと、帰るぞ」
好きな子にとんだ誤解をされたとっつーの機嫌は最悪だ。これ以上馬鹿にしようもんなら、本当に帰ってしまいかねない。俺はベッドから起き上がって、とっつーの隣に座りなおして、綺麗な浮かない顔を覗き込んだ。
「ごめんごめん」
「……チッ」
「ごめーんって。あ、そうだ。これ付けてよ」
おどおどちゃんからの贈り物をとっつーに差し出す。俺のは赤色。とっつーの髪の色。
「はぁ?自分で付けろよ」
「えー、いいじゃーん。とっつーに付けてほしーの!」
「たっく、めんどくせえ……ほら、耳向けろ」
「ふふっ」
とっつーの手が耳に触れる。口調は乱暴なのに、手つきは優しい。誰だってこのギャップにやられてしまうだろうに、どうしてあの子はなんとも思わないんだろ?
「ほら」
「似合う?」
「普通」
「そっかー。普通かー」
俺はにまっと笑って、抱き着くようにとっつーを押し倒した。
「今日は可哀想なとっつーのために、『戸塚君』って呼んであげようか?俺のエッチな声、結構おどおどちゃんと似てるっしょ?」
「……黙れ」
とっつーは俺を睨んだけど、こんなの全然怖くない。
(可愛いとっつー)
それで俺のこと、一番のセフレにしてくれてんだって、分かっちゃったんだから。元々誰かの代わりにされてんなぁとは思ってたけど、そういうことだったんだね。
大方、あの子は本命すぎて迂闊に手を出せないってとこだろう。
(本当に、とっつーって、かーわいいっ)
あの子と上手くいくといいね。
なんて、おにーさん心で思っちゃう俺も、たいがい不憫だと思うけどね。
*戸塚君とアホ望月 終わり*
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