171 / 242
第164話
人通りの少ない端の方によって、手に持ったわたあめを見つめる。
(ど、どうやって食べれば良いんだろう……指で良いのかな……?)
恐る恐る指で少し摘んで、口の中に放り込んだ。すると、一瞬にしてふわぁって溶けて、甘い味が口いっぱいに広がった。
ただの砂糖のはずなのに、なんとも不思議な食感。
「えっ、すぐに消えたちゃった!」
思わず興奮して上を仰ぐと、蓮君は俺のことをジーっと見ていた。高校生にもなってわたあめではしゃぐ自分が、途端に恥ずかしくなって、俺は顔をカアッと赤らめた。
「ご、ごめんね……思わず」
「いいよ。気に入った?」
「う、うんっ、すっごく美味しい。蓮君も食べる?」
「ううん。俺はいい」
「そっか……じゃあ、急いで食べるねっ」
(蓮君待たせちゃうのは悪いし)
そうして再びわたあめを摘もうとすると、スルリと蓮君が俺の髪を撫でた。そして、先生に似た綺麗な指が、クルクルと髪を巻きつけて遊び始める。
「蓮君……?」
「俺、心の髪撫でて待ってるから、ゆっくり食べて良いよ」
「ふぇ?」
「むしろゆっくりの方が嬉しい。心のこといっぱい触れる」
「ふぇっ!?」
冗談かと思うようなセリフだけれど、表情の硬い蓮君がどういうつもりで言っているのか分からなくて、困惑してしまう。
(そ、そんなに良いのかな……)
そういえば、先生も俺の髪はふわふわしてて気持ち良いって言ってた気がする。自分のとっては何の変哲も無いただの癖っ毛だけど、それを人様に褒めてもらうのはちょっと嬉しい、なんて浮かれてしまう。
(ふふ……なんか、蓮君って甘えんぼさんだなぁ)
結局はそう結論にたどり着き、俺は髪から感じる蓮君の手の動きを微笑ましく思いながら、わたあめを食べ進めた。
ともだちにシェアしよう!