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第166話

 「んんーっ」  まずはレバーを引こうとしたのだけど、これがなかなか硬くて上手くできない。最初からこれでは先が思いやられる。苦戦してると、見兼ねた蓮君が助け舟を出してくれる。  「俺、やる」  「あ、ありがとう……」  これ以上無駄な時間を使うわけにもいかず、諦めて蓮君に渡すと、いとも簡単にカチャッと音がした。  「すごい……蓮君、力強いんだねぇ……」  「そう?」  コテンと首を傾げた蓮君が銃を返してくれる。それを受け取った俺は、蓮君の指導通りに、コルクを詰めて銃口を的に向けた。つま先立ちになりながら狙いを定めるけど……可愛いうさぎさんを撃つのがは心苦しい。  (でも、これも蓮君のためっ……ごめんなさいっ)  俺はぎゅっと目を瞑って引き金を引いた。瞬間、バンッと音が鳴ったけど、目を開けてもうさぎさんは倒れていなかった。もちろんそれは残念なんだけど、ちょっとホッとしちゃう。  「心……目つぶったら、駄目だよ?」  「う、うん……けど、なんか可哀想で……。で、でもっ、次は頑張るねっ!」  そうして撃つこと四発。ちゃんと目は開けていたのだけど、どれもかすりもせず。  「うぅ……最後の一発……」  「ははっ、頑張れねーちゃん!」  (ね、ねーちゃん……?)  「あっ、ありがとうございますっ」  ちょっと引っかかるけど、お店のおじさんも応援してくれてるんだからと、ギュッと銃を握りしめる。そうして最後の引き金を引こうとしたとき、ふわりと背後から抱きしめるように手を添えられた。  「ふぇっ、蓮君?」  「ちょっと上狙って」  「上……?」  「銃身がぶれないように。手を台の上に置いて、脇は締めて」  「う、うんっ」  フワリと香るシトラスの匂いを感じながら、蓮君の言った通りにする。  「撃って」  耳元で囁かれた瞬間、引き金を引く。勢いよく飛んで行った銃弾は、うさぎさんの耳に命中し、そして──コテン、と倒れてくれた。  「……!やったぁ!」  何度撃っても駄目だったのに、最後の一発で目標達成。俺は嬉しくてたまらなくなって、思わず蓮君にぎゅうっと抱きついてしまった。  「すごいっ。すごいすごいっ」  「心、上手」  蓮君が俺の頭を撫でる。その言葉に、俺は顔を上げてかぶりを振った。  「えっ、違うよっ。蓮君が教えてくれたんだよっ」  「でも、心が撃った」  そうしてお互いを見つめ合っていると、大きな咳払いが一つ。  「あー……イチャつくのは良いが、他所でやってくれねえかね」  ニヤニヤとしたおじさんが、俺にうさぎさんを差し出していた。俺は我に返って、慌ててぬいぐるみを受け取る。  「あっ、す、すみませんっ。ありがとうございます」    

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