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第179話
「呑気なやつ……」
「?」
「そこが良いんじゃんか!もう、ちょうちょうちょうちょー可愛い!!」
山田君にぎゅーっと抱きしめられ、それをすかさず戸塚君が引き離す。それでも山田君は俺に抱きつこうとして、また戸塚君が剥がして。そうやって皆でじゃれていると、向こうから男の子の声がした。
「山田じゃん」
聞き覚えのある声に視線をやると、そこには山田君のお友だちが四人いた。その中にはもちろん松野君もいて、「やっほー」と手を振ってくれたので、俺も控えめに振り返す。
「おーっ」
山田君が皆に駆け寄ったので、必然的に戸塚君と二人で待つことになる。山田君が楽しそうにしてるのを見るのは、もちろん嬉しいんだけど、人見知りが発動してしまって、ちょっとだけ戸塚君に近寄った。そんな俺に、戸塚君の不思議そうな視線が向く。
「お前は良いのかよ?」
「う、うん……俺は、あんまり話したことないから……」
「ふーん」
(松野君とは仲良くしてもらってるけど、他の人とは全然なんだよね……)
罪悪感が、胸をチクっと痛めつけた。だって……。
「やっぱり俺らの誘い断って、望月君と来てたんだ」
栗原君──黒髪短髪で身長は山田君よりちょっと大きい男の子──の不機嫌そうな声に、ビクッと身体が震える。
そう、人気者の山田君が俺と一緒にいるということは、他の友達の誘いを断っているわけで。罪悪感の理由を突かれて、背中には変な汗が滲んでくる。
「は?栗原、何言って……」
ポカーンとする山田君を無視して、栗原君が俺の前まで近づいて来る。キッと睨みつけられて、思わず後ずさってしまい、戸塚君の袖をキュッと握った。
「ねえ望月君。一緒に回らない?」
「え?」
「皆での方が楽しいじゃん」
「えっと……」
(俺はクラスメイトだけど、戸塚君は……)
戸塚君は他校の生徒だし、皆と何の関係も持たない。それなのに俺が勝手に決めて良いものかと、考えあぐねていると、栗原君がさらにイラッとした表情を浮かべる。
「……望月君ってさ、なんでそんなにオドオドしてんの?」
「……え……?」
「俺、なんか嫌なことしたわけ?」
「栗原?何言ってんだよ。やめろって」
山田君が制するように栗原君の手を掴んだけど、栗原君はそれを強く振り払った。
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