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そうこうしているうちに、いつの間にか目的地に到着。塀沿いに車が停車し、エンジンが止まったのを確認してから、俺は降りようとドアに手を伸ばす。すると、その上に自分のより冷たい温度がそっと重なった。
「ふぇっ……」
瞬間、ドキッと心臓が跳ねる。
大好きな先生の手。大きくて、指がスッと長くて、血管が色っぽく浮き出てて、すごく綺麗。運転してる時も、つい盗み見てしまうくらい、本当にカッコいい手なの。
そんな手に触れられているのだから、胸がきゅうんと高鳴るのはお決まりで。俺は胸をバクバクさせながら、先生を上目で見た。
(近い……心臓おかしくなっちゃう……)
真近に迫る端整な顔に、ほっぺが熱くなるのを感じながら、俺はなんとか口を動かす。
「せ、せんせ?着きましたよ、ね……?」
「うん……でも、今日泊まりだろ?しばらく出来ないから……」
「し、しばらくって……来る前、家でいっぱい……」
今と同じようなことを言われて、たくさんキスをしてもらった。軽いものから深いものまで、いっぱい。とろとろに蕩けちゃうくらいに。
それに、夜は前みたいに同じ部屋だと思うし。しばらくと言っても、もうすでにお昼過ぎだから、せいぜい八時間くらいだ。
「うん……でも、まだ足りない……」
先生は、寂しそうに眉を寄せて、さらに顔を近づけてくる。俺は無意識に後ろに引こうとするけど、ドアに邪魔をされてしまう。開けようにも、先生に指を絡められていて動かせない。
吐息がかかる距離。俺は顔をこれでもかと赤らめ、伏し目がちになってしまう。
「せ、せんせ……待ってくださ……」
「嫌……?」
「い、やな……わけ、ないですけど、外が……」
そう。嫌なわけがない。
俺だって、出来ることなら一日中先生とくっついていたい。でも車の中だから、外から見えてしまうかも。もし人に見られたら、一番困るのは先生だ。俺のせいで先生の生活に影響が出てしまうのは、絶対に避けなきゃいけない。
「大丈夫。誰もいなかった」
「で、でも……」
「心……今日も可愛い……」
反対の手でスルリとほっぺを撫でられて、胸がぎゅんと跳ねる。
(うぅ……ずるい……)
そんなカッコいい顔でそんな嬉しいこと言われたら、拒めなくなっちゃう。だって、本当は俺だってキスしたいんだもん。
(誰もいないなら……良い、かな……)
先生が何も考えずにこんなことするはずないし。先生が大丈夫だというのなら、本当に大丈夫なのだろう。
「心……」
俺の気持ちの変化を感じ取った先生が、さらに距離を詰めてくる。俺はゆっくり目を閉じて、先生の柔らかな唇を受けいれた。
「んぅ……」
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