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*  「心……!」  チャイムを押すなり、すぐにドアを開けて迎えてくれる蓮君。パタパタと尻尾を動かしていそうなほど喜んでくれる様子に、こっちまで嬉しくなってしまう。  「心、久しぶり……会いたかった」  「えへへ、お正月ぶりだね。俺も会いたかったよ。受験お疲れ様」  そう言って微笑むと、蓮君はぎゅうっと抱きついて来た。  「れ、蓮君?」  「はぁ……可愛い。やっぱり心、可愛い……」  「そ、そうでもないよ……?」  「ううん。可愛い。大好き」  「っ⁉︎」  直球すぎる言葉に思わず顔を赤らめてしまうと、なかなか離れない俺たちを見兼ねた先生が、「れーんー」と唸りにも似た声を出した。  「これ、合格祝い」  先生が差し出したのは、ポチ袋もとい現金。蓮君はそれが一番喜ぶらしい。好きなものを自分で買えるからって。  すると、蓮君は俺から離れて、嬉しそうに目を細めながらポチ袋を受け取った。  「兄ちゃん。ありがと」  「うん。合格おめでとう」  「……ん」  (ふふ)  気持ちよさそうにわしゃわしゃと頭を撫でられる蓮君。仲睦まじい二人の光景が微笑ましくて、ついほっぺが緩んでしまう。そのまま眺め続けていたら、先生と目が合って、何かを促すように微笑まれた。  (そうだった……!)  今日の一番の目的を思い出した俺は、慌ててお泊まり用のショルダーバッグをあさり始めた。  「あのねっ、俺も蓮君に合格のお祝い持ってきたのっ」  「心も?」  「うん。新学期から同じ学校で、よろしくねっ」  そう言って差し出したのは、両手に収まる小さな箱。流石に俺はお金を渡すわけには行かないから、山田君たちに手伝ってもらって、とあるプレゼントを選んだ。  「お気に召すと良いんだけど……」

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