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6-聖夜横恋慕研究室

夜七時過ぎ。 とある私立大学一号館三階奥にあるこぢんまりした個人研究室。 両サイドの壁際を占領する棚には書物がびっしり、中央にはセミナーで学生が着席する長テーブル、窓側に配置された古めかしいデスクは整然と片づけられていた。 「……寒い」 この部屋の主である、つい先ほどまで図書館で調べものをしていた三十七歳の文学部美人准教授の一ノ宮、思わずぽつりと独り言を。 キャンパス一古い建物故に隙間風が入り放題、窓は締めているはずなのに閉ざされたブラインドが音もなく揺れている。 ずっと図書館にいて暖房を切っていたために寒い室内、一人凍えながら一ノ宮は帰り支度を始めた。 コートハンガーに預けていたロング丈のトレンチコートを羽織り、あたたかそうなカシミアのマフラーをぐるりと首に巻きつける。 鍵をかけづらくなるので上質なレザーの手袋は後、コートのポケットに一先ず備え、ブラックのイタリア製ビジネスバッグを小脇に抱えて明かりを消して。 さぁ帰ろうとドアを開けたら。 「おわっびっくり!」 「センセェ、今帰るとこか」 招かれざるべきシロクロ双子がドアの向こうに立っていた……。 「やっやめないか……っ、こら!」 帰ろうとしていた一ノ宮を強引に消灯の済んだ研究室に押し戻したシロクロ。 常套手段なる前後抱擁にて一ノ宮の自由を速やかに奪い、イチャイチャを強要してきた。 「てかこの部屋寒すぎ、廊下より冷えてねぇ?」 「センセェであったまらせてー」 ダウンを着込んで、タイトなスキニーにスニーカー、相変わらずどれも色違いのお揃いだ。 「冬のセンセェってキュンキュンしちゃう」 一ノ宮を背中から抱きしめたクロ、マフラーやコートに頬擦りしつつ、ぎゅっとしてくる。 「美人度あがるよな、厚着だと剥いていく楽しみも増える」 正面から抱きしめたシロ、銀縁眼鏡に息を吹きかけて白く曇らせ、イタズラ好きな悪ガキのように笑う。 「み、見えない……っ」 前後からぎゅうぎゅう抱きしめられ、実はシロクロが最も保温効果を成しているわけで、しかしそれに甘んじるわけにはいかない一ノ宮。 ぼやける眼鏡に焦燥して身を捩らせていたら正面のシロからキスされた。 「ん……む……!」 身悶える一ノ宮に好き勝手にシロがキスするのを至近距離で見つめるクロ。 一ノ宮がシロの唇から解放されるのを今か今かと待ち侘びた。 「ん……っン……んっ……っ……っ……」 「なー、シロぉ、そろそろ俺もセンセにちゅーしたいんですけどー」 なかなかキスをやめないシロに不満をぶつければ、一ノ宮の唇を深く深く塞いだシロ、鬱陶しそうに横目でクロを睨んできた。 むっとしたクロは。 「っ……、ッぷはっ!? っ、んむ!」 無理矢理二人のキスを中断させるや否や、今度は自分が一ノ宮の唇を強引に奪った。 「おい、ふざけんな、クロ」 「んー?」 「っんっんっんーーー……!」 それからしばしシロクロによる一ノ宮の唇争奪戦が繰り広げられた。 いつものように美人唇は酸欠寸前、二人の狭間で窒息ぎりぎりまで追いやられ、一ノ宮は苦しげに喉奥で切なげに断末魔を滲ませるしかなかった。 「っ……は……はぁ……はぁっ……」 やっと二人に解放された唇はリップクリームによる保湿を上回るほどの艶を擁していた 「はぁ……は……ぁ……いつも思うが……君達は……私を殺す気なのか」

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