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「俺達って前からいつもこーだよ?」 「お気に入りは半分コしてきたんだよな」 「そーそー」 「はぁ……今の振舞から仲睦まじく分け合ってきたとは到底思えないな……幼稚な征服欲が満たされたのなら離してくれないか」 シロは曇っていた眼鏡のレンズを親指で拭いてやり、普段は涼しげな双眸がじんわり発熱しているのを見つめ、言った。 「クリスマス一緒に過ごしてくれるなら離してやってもいい」 またそれか。 「クリスマスは毎年家族と過ごす。昨日も今朝もそう言ったはずだ」 「ブランド好きの奥サマならびにおばかな鏡花ちゃんとー?」 「ツリーとか出して手作り料理並べてプレゼント交換でもすんのかよ」 ツリーは出さないし、外食で、プレゼントは交換じゃない、一方的に私が搾取されるのみだ。 「……君達に関係ない」 未だ前から後ろから抱きしめられている一ノ宮はそう答えて正面のシロからぷいっと顔を背けた。 するとシロは。 「俺もプレゼント欲しい、先生」 抱擁を解くと一ノ宮の手をとって頬擦りした。 「つめた」 「……君の手だって冷たい」 背後に立つクロから頻りに頬にキスされてくすぐったいながらも、薄い皮膚を軽く啄んで上目遣いに見つめてくるシロに一ノ宮の視線はどうしても束縛される。 そう。 時に彼は日頃見慣れない表情をその顔に陽炎のように揺らめかせ、そうして体どころか私の心まで惑わそうとする……。 「あっためてやるよ」 シロは一ノ宮のかじかむ長細い指を唇に含んだ。 色づく息を薄闇に途切れることなく舞い上がらせて濡れた微熱を纏わせていく。 うっすら開かれた唇の狭間に覗く舌先の仄かな戯れ。 一ノ宮は中断を願うこともできずに、指先だけに注がれる施しに体中をじわじわと発熱させながら、シロから視線を逸らせずにいる。 「センセェ、ぽかぽかしてきた」 一方、クロはと言うと。 トレンチコートの前を寛げ、スーツ下に着用しているストライプシャツのボタンを二つ外すなり、生じた隙間にずぼっと片手を。 「ッ!」 急に肌に覚えた冷たさに身を竦ませた一ノ宮の震えをちょくで感じ取って満足そうに笑った。 「センセェはここで俺の手あっためて?」 「や……っ冷たい……やめ……」 冷え切った指先でいきなり乳首を強めに抓られた。 「ゃっ!?」 「かわい、本気で痛がってる、もっと抓っちゃお」 「あぁ……っんんん……ッく」 「痛い? これ痛いの? でもセンセェ痛いこと好きだもんね?」 「好きじゃなッ、んーーー……ッ!」 「感じてるセンセェ好きだけど、痛がってるセンセェもサイコー、ねー、ほら、どー? もっと痛くしてい? ねーねー、センセ、ッあ、いでッ!!」 片割れに手の甲を容赦なく抓られてクロは堪らず手を引っ込めた。 一ノ宮の指先を口腔でじっくりあたためていたシロは呆れ気味に片割れを睨む。 邪魔な薬指の指輪をそのまま指ごと噛み千切って呑み込んでしまいたい、そんな欲求に一瞬だけ駆られた自分も自分なので、注意はしなかったが。

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