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向かい側のソファで。 寝ているのか座っているのか、だらしない姿勢で寛ぎながらも食い入るように一ノ宮の動向を見守っていた、今日も色違いなシロクロ双子。 長く美しい指に支えられたチョコが唇の寸前でぴたりと止まった。 顎を引き、眼鏡越しに、魅惑の上目遣いが……仮初の年下主君を見つめ返した。 「私が独り占めしていいのだろうか」 甘美なる香りの罠を舌でそっと撫で、仄かな温みで表面だけを僅かに溶かす。 「君達が作ってくれたチョコレートだ、よければ、共有したいと思うのだが」 「共有?」 色気だだ漏れな仕草に釘づけになっていたシロが聞き返せば一ノ宮は緩やかにソファから立ち上がった。 テーブルを迂回し、すとんと、シロのお膝に座る。 「そう、共有……シロ君と私で」 そう囁いて一ノ宮は口内にチョコレートを含むと、そのままシロに口づけを。 だだ漏れ色気に中てられたのか、じっとしていたシロの口内に舌先でチョコを押し込んだ。 ごっくん 「あーーっ、シロぉ、お前飲み込んじゃったの?」 「……うっかり飲んだ」 「あーあ、どんな草食人類でも一発で盛っちゃう代物なのにぃ」 「……そんなものを私に食べさせようとしたのか」 「う」 「しかも即効性! 長持ち! バリバリ絶倫人類に進化!」 「……わ、私は帰る」 「あははぁ。ちょい待ち、センセー」 「う、う、う」 「だ、大丈夫なのか、シロ君は、妙な副作用があるんじゃ」 「だいじょーぶ! だと思うよ! てかさ、当初の計画としてはセンセーに媚薬チョコ食べさせて、どろっどろの頭と体にしちゃって、夜までずーーっとズボズボ生ハメ三昧♪ の予定だったんだけど」 「やめてくれ」 「まー、素直に食べてくれるとは思ってなかったけど? 色仕掛けで逆にシロに食べさせるなんてねー……さすがセンセェ、惚れ直しちゃう! 一本取られた! 完敗です!」 「え」 クロはお皿に乗っていたチョコレートを自らぱくっと食べた。 しかも二粒。 「……あー……やべぇ……一ノ宮センセェ……? あんた俺に媚薬チョコ食わせた責任とれよな……?」 「あー。媚薬チョコおいちぃ。本能の味がするー」 これならば私自身がチョコを食べていた方が……よかったかもしれない。

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