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パラレル番外編-異世界trip/吸血鬼双子
交通事故に被害者として遭遇したはずの一ノ宮、迫りくるヘッドライトの眩しさに思わず瞼を閉ざし、次に目を開いてみれば、そこはすでに異世界だった。
一見して前世界と何も変わらないようなコンクリートの街並み。
しかし外灯と通行人が極めて少なく、漠然と異なる雰囲気に包まれ、そして。
ビル群の狭間に浮かぶやたら明るい満月。
そこは吸血鬼に支配された世界。
純血の人間は激減し、鋭い牙と絶対的夜に怯えながら息を潜めて日々を過ごす、弱肉強食の世界。
当然、吸血鬼の血など一滴も混じっていない純血人の一ノ宮は吸血鬼にとって格好の美味なる餌食に値する。
しかも、三十路男性ながら美人、ときている。
どこか作り物然とした街で彷徨っていた彼は数人の若い吸血鬼グループにあっという間に追い詰められた。
夢としか思えない。
しかしこれは夢じゃない。
空想上の産物であったはずの吸血鬼がここには存在する。
現に今、ほら、ホラー映画で見かけるような凶器じみた牙が私の首筋にもう少しで届く……。
「おい」
「あれー、君ら、俺らのお庭で何好き勝手にしてくれちゃってんの?」
一ノ宮の窮地に現れたのは何から何までお揃いの双子だった。
顔立ちはもちろん、黒髪、黒シャツに黒ジーンズ、ハイカットの黒スニーカー。
この世界で上級層の吸血鬼は黒を纏い、下層になるにつれて白へ近づいていく。
グレーの服を着ていた吸血鬼グループはまっくろくろな双子の出現に恐れ戦き、慌てて逃げていった。
ひんやりと冷たい路上の隅で膝を突いていた、絶妙な具合に眼鏡がずれ落ちていた一ノ宮の元へやってきた双子。
人生初となる異世界tripで時差ボケ的なものに眩暈が止まらない、美人准教授に、手を差し伸べた。
「綺麗な人間さん、こんばんはー」
「こんなとこで腰抜かしてたらまた襲われるぞ、アンタ」
一ノ宮には、選択の余地が、なかった。
恐怖と心細さに心を犯されていた彼は差し出されたその手に縋ることしかできなかった。
シロクロという名の双子がこの上なく罪深い牙を持っていることなど、その時の彼には、知る由もなかった……。
「ふーん、大学の先生、ね」
「あ……っいやだ……っああ……!」
「別の世界から来たとか、マンガみてぇ、もろにSFだな」
「あああああ……!!」
「じゃあ、先生って呼ぼ、一ノ宮センセ?」
「今夜はとことん俺らの奴隷、な、センセェ?」
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