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双子の過去を知った。 断片的にだが。 パズルのように一つずつ、ゆっくりと焦らずに、二人の記憶の欠片を拾い集めた。 『二人一緒に生まれてきたせいだ』 体の弱かった母親は双子を出産した直後に。 愛する人の死を嘆いた父親は新しい生を受け入れられずに。 かつてこの家で暮らしていた、今は亡き父方の祖父の愛情を糧にして双子は育った……。 「幸せ」 シロがすぐ背後で紡いだ呟きに一ノ宮は長い睫毛を震わせた。 「ずっとセンセェがいつでもここにいるって、すごい、嘘みたい」 「……君は本当にシロ君か?」 どこかこどもじみた物言いがクロっぽくて一ノ宮は思わず振り返った。 「俺だよ」 やっと視線を交わしてくれた一ノ宮にシロは笑いかける。 部屋の明かりは消され、床に置かれたスタンドライトの照明にぼんやり照らされた笑顔は、やはりどこか幼く見えた。 人を小馬鹿にしているような普段の表情とも、時に一ノ宮を惑わせていた淋しげな翳りを含む表情とも違う。 興味深げに眺めていたらシロにキスされた。 布団の中で寝相を変えられ、仰向けになった彼に乗っかる格好になり、毛先の濡れた髪を両方の掌に弄られながら、奥まで。 喉元をヒクつかせて呻吟する一ノ宮を薄目がちに窺いながらシロは両手を肌伝いに移動させていく。 肩甲骨の凹凸が悩ましげな背中を辿って、なだらかな腰を過ぎ、尻丘へ。 布越しの愛撫は省いて服の内側へ一息に。 これまで散々虐げてきた、年齢の割に色艶に富む一ノ宮の尻をダイレクトに強めに揉み捏ねた。 「ぁっ、ちょ、ッ」 「マッサージ。疲れとれんだろ?」 「とれな……ッ、そ、そこばかり……ッいやだっ」 「淫乱センセェ、ケツの外側だけじゃ物足りねぇ?」 もう涙目の一ノ宮は真下で寝そべるシロをキッと睨んだ。 「いでッ」 いきなりぎゅぅぅぅうっと両方の頬を抓られてシロはびっくりする。 「言ったはずだ、それはやめなさい、相手を貶めるような言い方は」 「ンだよ……好きなくせに」 「ッ、好きじゃないッ!」 「センセェ、ほんと、ここに住めよ」 まだ尻を揉み続けているシロに言われて一ノ宮はぐっと言葉に詰まり、咄嗟に真下から視線を逸らした。 「なぁ」 「……、……くれ」 「え?」 しっとりと艶めく前髪をさらりと額に落とした一ノ宮は囁きにも等しい微かな声色でシロに言う。 「……これ以上、私を甘やかさないでくれ、シロ君……」 部屋の片隅に懸命に視線を縫いつけたまま、頬をうっすら紅潮させ、自分の真上で切れ長な双眸を満遍なく潤ませた一ノ宮に……シロは釘づけになった。 「俺達んトコに帰ってきてよ、一ノ宮センセェ」 ぎこちなく視線を戻して一ノ宮は再びシロを見つめた。 「俺達におかえりって言わせて、センセェ」 「シロ君」 「いっしょに幸せになって」 ぐるんと視界が反転して位置が入れ替わった。 両足の間に大胆に割って入り、一ノ宮の胸に片頬を押しつけてきたシロ。 まるで眠るように目を閉じて鼓動に耳を傾ける。 「頭撫でて、センセェ」 一ノ宮がここで寝泊まりするようになってからというもの、時折、シロには幼児退行の傾向が見られるようになった。 頭を撫でていたらそのまま眠ってしまう。 今日に限ったことではない。 一緒の布団に入って求める素振りを見せておきなからセックスしない、そんな夜もざらにあった。 「おやすみ、シロ君」 小さな寝息を立てて眠りについたシロに囁きかけ、一ノ宮は、読みかけていた文庫本のページを開く……。

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