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双子宅に帰ったのは夜の八時を回った頃だった。
準備の手伝いができなかった一ノ宮はせめて後片付けくらいはしたいと、台所で洗い物に取り掛かったのだが。
がちゃ! がちゃん!
「センセェ、もちょっと優しく洗ってくれる?」
「す、すまない、力加減がよくわからない」
「……どこの王子様だよ、あんた」
やたらスポンジを泡立てて一生懸命食器を洗う一ノ宮をシロとクロは至近距離より観察する。
あんまりにも泡立てるため、ふわふわ泡が鼻先にまで飛び散っている。
誰でもこなせる家事を真剣な眼差しでやっているのがおかしくて、可愛くて。
物欲しくなる。
「わッ?」
双子に同時に尻丘をナデナデされて一ノ宮の肩がビクリと震えた。
まるで分け合うように左右の尻たぶを服越しに撫で上げ、時に強めに揉んでくる二人を交互に睨んだ。
「こッ……こら、二人とも!」
「もういーよ、センセェ」
「センセェに任せてたら食器割れそー」
水を止めたシロクロ双子は一ノ宮を速やかに居間のソファへ促した。
ソファに到着するなりキス攻め。
息継ぎの間さえ与えられなかった、美人唇を奪い合うような以前と比べて、それは。
「センセェ、今日楽しかったね? また行こ?」
「また同じトコかよ?」
「んー、じゃあ動物園? 水族館? 温泉?」
「あ、温泉行きてぇ」
背中から抱きしめるシロからはうなじに小刻みにキスされて。
両足の間に割って入ってきたクロからは、手をとられ、各指先の関節に啄むようなキスを落とされた。
「っ、くすぐったい、ん、だが」
身を捩らせる一ノ宮の肌伝いにシロとクロは少しずつキスを移動させていく。
ゆっくりなペースは不慣れで却って鼓動の加速を誘う。
様子を窺うように笑いかけられると、年甲斐もなく、どきどきしてしまう。
「なぁ、センセェ」
耳たぶをかぷっと噛まれた後、鼓膜のすぐそばでシロに囁きかけられて、一ノ宮はぎこちなく背後を仰ぎ見た。
「口にしてもい?」
柄にもなくキスの了解を求められて。
柄にもなく一ノ宮はぼふっと赤くなった。
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