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パラレル番外編-all高校生-2
「「一ノ宮せーんぱーい!!」」
毎朝行われる礼拝の前。
三年生教室に一年転校生のシロクロ双子による物怖じしない呼び声が響き渡った。
開きかけた文庫本のページを中途半端なところでぴたりと止め、一ノ宮は、ため息を殺す。
「おはよぉございまーす、わぁ、今日はまた一段と美人、昨日の放課後エステにでも行きましたぁ?」
「昨日は俺らと焼き肉食いに行っただろ」
「あ、そーだった!」
どうして朝からこうもハイテンションでべらべら、べらべら、べらべらと……。
物憂げに片手でこめかみを押さえる一ノ宮。
机に腰かけて話しまくるクロ。
隣の空席に寄りかかって足先で足先にちょっかいを出してくるシロ。
最近、この教室ではすっかり馴染み深い光景だった。
シロクロ双子が転校してきてから約半月が経過した。
彼らは上級生一ノ宮に正しくべったり状態、休み時間もフロア違いの教室へわざわざ出向いたり、昼休みは食堂で両隣を占領、放課後は半ば強引に夕食へ連れ出したり。
『センパイも勃ってんだろ』
『食べちゃいたい、センパイ』
悩ましい出来事はあの一度きり。
過剰な接触は頻繁にあるが、それ以上、性的な触れ合いに双子が及ぶことはなかった。
だから一ノ宮は不慣れながらも友人としてシロクロと何とか付き合うことができていた。
終礼前に行われる学内清掃。
今週、一ノ宮が担当する場所は四階チャペルだった。
毎朝開かれる全校礼拝の場。
木製の長椅子がずらりと並び、角にはパイプオルガンが設置されている。
讃美歌を歌い、聖書を読み、外部から招いた牧師やクリスチャンである教師の話を聞き、共にお祈りを唱える神聖なる場。
他のクラスメートが怠け気味に掃除する中、一ノ宮はステージ上の聖書朗読台を乾拭きし、白百合の活けられた立派な花瓶の水を取り替えた。
よくない噂が付き纏う一ノ宮を敬遠しがちなクラスメートだが。
荘厳な雰囲気にあまりにも溶け込む見目麗しいクラスメートの姿に、このときばかりは男女問わず見惚れてしまう。
終礼前の予鈴チャイムが鳴ると、はたと我に返り、慌てて去って行ったが。
ステンドグラスから差し込む薄明かりの元、最後に残った一ノ宮は艶やかな黒髪をさらりと翻し、通路を突き進んで教室に戻ろうとした。
「一ノ宮君」
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