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パラレル番外編-3

教師はチャペルで待っていた。 チャペルへ突撃するなり教師をぶっ飛ばしたクロ。 片割れの暴行を間近にしてただ見つめるシロ。 胸を押さえて双子の後を追ってきた一ノ宮。 「君達のせいじゃないか」 「はぁー?」 「君達が来なければ私はこんな真似には至らなかった、静かな時間を彼と一緒に過ごすことができれば、それだけで満足できるはずだった」 「お前何言ってんの?」 「これは君達という異分子が招いた混乱だ」 クロに蹴られても、シロに睨まれても、教師は反省しない、謝罪しない、罪を罪と認めない。 歯車がどこか欠けているらしい。 「君達がこの学園に現れたせいで起きた(わざわい)だ」 悪夢の十分間、怖くて、怖くて、叫ぶこともできずに恐怖と苦痛にただ押し潰されていた一ノ宮は。 神聖なる場において、彼は――――――― がっしゃーーーーーーーん!!!!! 匂い立つ白百合の花弁と水飛沫を散らし、立派な花瓶をステンドグラスに向けてぶん投げた。 鋭い音色を奏でて四散するガラス破片。 密やかなる混沌空間に覗いた、それはそれは穏やかな青空。 「こ……っこのクソキチガ○教師……っ!」 ステンドグラスを突き破った花瓶が地上にてけたたましく割れる音の残響残る中、一ノ宮は、呆気にとられているシロクロ双子の間に覗く、愛しい生徒の思わぬ凶行に目を見開かせている教師に言い放った。 「お、お前なんか……豚だ! いやッ、違うッ、豚とは比べ物にもならない屑だ! 屑人間! 屑野郎!」 「い、一ノ宮君、どうしたんだ、そんな汚い言葉、君らしく、」 「うるさいうるさい!! きっ、気持ち悪い……ッこのクソ屑教師ッ!! 何が禍だッッ!! シロ君クロ君のせいにするなッッ!! くたばれッくたばれッくたばれーーーーーー…………ッ!!!!!!」 長いこと溜め込んできた思いの丈をぶちかましたご乱心一ノ宮。 シロクロ双子はそんなご乱心先輩をただただ見つめる。 クールビューティフェイスは大いに崩れて、究極しかめっつら、水飛沫に濡れて乱れた黒髪、ずれた眼鏡、過呼吸気味な椿色の唇。 「死んで地獄に堕ちてもう一回くたばれーーーーッッッ!!!!!」 「窓、割ったの、あのセンセェですよ」 「そーそー、いきなり喚き散らしたかと思ったら、がっしゃーんって」 「たまたま居合わせた俺らと一ノ宮センパイで止めようとしたんですけどね」 「そーそー、でもムリでした、てかなんかこわくないですか、あの人、頭だいじょーぶですか」 「喚いてたかと思ったら、いきなり静かになって、なんも言わなくなったし、あれ、ちょっとキてんじゃないですか、なぁ、センパイ」 「あ……っ、……、……ハイ」 愛しの生徒に幻滅して絶望して世界が真っ暗になった教師は他の教師に支えられて一先ず校長室へ連れていかれた。 裏庭に散乱した窓ガラスの破片を率先して無心で片づける一ノ宮に付き合い、シロクロ双子もせっせと片づけに専念した。 上級生が鞄を置いたままにしている三年生教室へ三人は戻った。 「軽率だった、裏庭に誰かいたらとんでもないことに……」 教室に戻るなり、自分が仕出かした凶行の重大さに青ざめた一ノ宮は脱力するように自分の席に着席した。 クラスメートは誰一人いない静かな教室。 一ノ宮は眼鏡をカチャリとずり上げて両手で顔を覆った。 「怪我どころか命だって……本当になんてことを……許されない」

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