17 / 66

パラレル番外編-孕んじゃいます

「ねーねー」 「センセェってさぁ」 夜七時過ぎの大学。 帰宅しようと人気のない冷ややかな旧館の廊下を突き進んでいた一ノ宮は立ち竦む。 三十代美人准教授の目の前に立ちはだかったシロクロ双子は、とっておきのオモチャを手にしたこどもみたいに、それはそれは愉しげに笑っていた。 「「男なのに孕むんだって?」」 よりによってこの双子に知られてしまうなんて。 「すげぇよな、男がこども産むなんて」 「んむっ、んむーーーっ!」 「SFだよねー、エイリアンみたーい」 「んっんっんっ……!」 一ノ宮、現在、軽薄なラブホの一室にて素っ裸。 自分が締めていた海外ブランドのネクタイで後ろ手に両手首を縛られ、唯一、眼鏡だけを身につけた状態にあった。 「あれー、でもさー、俺らって結構したよね? 中出し?」 「んむんぅぅぅ~~……っ」 「だな。ほぼ毎回、した」 「ふぁっ……んぐっ……んむ……っ」 一方が話をしている間、一方にキスされて、キスしていた一方が話し出せば、話をしていた一方にキスされて。 一ノ宮は呼吸するタイミングが掴めない。 「んふぅぅ~……っんぶっ……!」 「じゃーもしかして、もー孕んでたり?」 「俺らのこども?」 孕んでいない。 時と場所を考えずに盛る彼らと関係を持った「その日」の翌日から避妊薬を密かに服用していた。 警戒は怠らなかった。 だが、ここしばらくは服用を止めていた。 吐き気などの副作用がつらいというのもあったし、双子が自分に手を出さない日が続いていたから。 飽きたのだろう。 こどものように、好奇心に流されるがまま無邪気に虐げて、飽きたから、棄てた。 それだけの話だ。 そう思って油断していた。 「なーセンセェ?」 「孕んだのー?」 久しぶりにシロクロ双子から蹂躙されて身悶えながら一ノ宮は答えた。 「孕んでいない……ッ、ちゃんと薬を……飲んでいた……」 「……おくすりって」 「……避妊薬かよ?」 「……ッ……ッ……ん」 「あー……だから時々具合悪そうにしてたんだぁ」 「講義中、フラフラしたり、吐きたそうにしてたの、あれ、薬のせいか」 項垂れた一ノ宮越しに双子は顔を見合わせた。 「てっきりさー」 「なぁ」 「俺らのとの関係に悩んでんのかなーって」 「はぁはぁ……、え……、んっ」 「ベッドではよがっちゃうけど、後から自己嫌悪? とか? してんのかなーって」 「ぁっ……ぃや……っ」 「吐きそうなくらい後悔させんのは、さすがにな」 「っ……う……ぅ……っ」 「だから距離おいてたんだよー」 「はぁ……っはぁ……え……?」 私を気遣って距離をおいていた、そう言うのか? 「でもさー、禁断症状出まくり、やっぱ我慢は体によくないねー」 「イライラ、ムラムラ、睡眠不足、センセェいないとダメだわ、俺ら」 「そしたらさー、大学病院付属の医学部院生から? 例の話が耳に入って?」 「まさかな、センセェが男なのに孕む特殊体質だなんて」 一ノ宮は震えた。 さっきから、どこか、ノリがイマイチな彼。 それは先ほどから交わされている双子の会話に原因があった。 「……や……やめてくれ」 体が昂ぶる一方で心は(しぼ)んでいく。 「好きで……こんな体に……異質なものに生まれてきたわけじゃ……ない」 「センセェ?」 「どうした?」 「エ……エイリアンとか……酷すぎる」 「……えー、誰が言ったっけ、そんなこと」 「……てめぇだ、クロ」 「特殊だって……いい加減、自分でもわかっている……それなのに追い討ちかけるように……強調して言わなくても……」 「あー、それはシロが言った」 「うるっせぇ、クロ」 「……ぐすん」 泣き出してしまった一ノ宮。 「お前が悪い」と睨み合う双子。 しかしここであーだこーだ言い争っても埒が明かない。 ここは全力で慰めて失言をカバーしなければ。 そんなこんなで双子が思いついたのは。 「あん……っ……そんな、二人一緒に……っ……っ」 一ノ宮のペニスに同時ご奉仕。 勃起しきった熱源に二人の舌がこれでもかと淫らに這い回った。 「ん……特別ご奉仕だよ、センセ?」 「料金発生モンだな……ん」 シロクロ双子の舌に翻弄されて見事に堕ちた一ノ宮、連続二回、達してしまった。 しかも顔射。 ご丁寧に不本意に双子それぞれの顔に溜め込まれていたスペルマを成す術もなくぶっかけた。 「うわ、濃いね、淫乱センセェの」 「どんだけご無沙汰だったんだよ、量もすげぇな」 互いの顔にどろっと伝う一ノ宮エキスを見せ合いっこする双子に一ノ宮は赤面する。 「まー、俺らもご無沙汰なわけですから?」 「覚悟しろよな?」 服を着たままでいたシロクロ双子はそれぞれ同時にボトムスのファスナーを下ろした……。

ともだちにシェアしよう!