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13-最終章-死が三人を分かつまで

秋月が街を見下ろす深夜。 住宅街の外れにある和風な平屋の一戸建て、シロとクロはそれぞれの部屋で恐ろしいまでのシンクロ率で目を覚ました。 「一ノ宮センセェ……?」 こめかみを涙で濡らしたシロはここにはいない彼の名を呼号する。 「……センセェ……」 尾を引く悪夢に目蓋の裏を支配されたクロは部屋の隅にこびりつく薄闇を睨んだ。 「……君達、今、何時だと思っているんだ……」 草木も眠る丑三つ時、戸を叩く代わりにインターホンを連打されて叩き起こされた一ノ宮。 マンション出入り口のオートロックが解除され、部屋へ向かえば激オコな私大文学部准教授に出迎えられて、シロクロ双子は。 「「センセェ」」 二人揃って一ノ宮をひっしと抱きしめた。 ただならない様子に、激オコだった一ノ宮は眉間の皺をいくつか減らして小首を傾げるのだった。 「二人揃って私が死ぬ夢を見た?」 一ノ宮はすぐに眉間の皺を元通りに、いや、最初よりも一つ二つ増やした。 「それはなんとも不謹慎な夢を見たものだな」 ソファに並んで座った双子は顔を見合わせる。 「目覚めは最悪、喉も干乾びたみたいにカラッカラで、水飲みにキッチンに行ったらクロがいて」 「俺もシロも同じ夢を見たってわかって? そりゃもー、寒気の嵐で?」 「なんか居ても立ってもいられなくなって、センセェに電話してみたら、全く出ねぇ」 「就寝中は消音にしているし、ぐっすり眠っていたんだ」 「俺らの気も知らねーでよくぐっすり眠れたもんだな」 「センセェの神経疑っちゃう〜」 「実際に知らなかったんだ、仕方ないだろう……それで連絡がとれなくて不安になって、ここへ来たわけか」 こっくり頷いた二人に、黒いパジャマにナイトガウンを羽織った一ノ宮は銀縁眼鏡をかけ直し、ため息をついた。 まるで小さなこどもだ……。 悪夢に怯えた幼子が母親に縋りつくような……。 「ホットミルクでも飲むかい」 力なく項垂れ、いつになく元気がなかった双子は傍らに立つ一ノ宮を見上げた。 「酒がいい」 「ホットワインがいいなー」 いつもの調子を取り戻しつつある双子に一ノ宮は肩を竦め「ホットミルクが嫌なら白湯を出すが」と言い、リビングで唯一明かりの点る対面式キッチンへ回り、ミルクパンで牛乳を沸かそうとした。 「……シロ君、クロ君、火傷したいのか」 正に子どものように一ノ宮の後をついてきた双子。 しかも両サイドから抱きついてきて、かなり動きが制限される、呆れた一ノ宮は交互に洩れなく二人を諌めた。 「別にこれでも湧かせんだろ」 「危ないだろう」 「だいじょーぶ、センセェが火傷しないよう俺達が守ってあげる」 離れまいと、てこでも動かない成人済みの二人。 三十代後半の一ノ宮は諦めた。 「ねーねー、俺、砂糖いっぱいがいい」 「げ。センセェ、駄目だぞ、甘ったるくなる」 「クロ君、カップに注いでから自分の分にだけ足したらいい」 「えーい、どばどば」 「あ、てめぇ、この馬鹿クロが」 「激甘ホットミルク~」 「……こんな夜遅くに摂取する砂糖の量じゃない」

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