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「センセェ、どーしてそっちに座んの?」
「ソファに三人並ぶのは狭いだろう」
「やだ、こっち来て、一緒に飲も」
「こっち来ねぇんなら俺とクロがセンセェの膝に座っけど」
「やめてくれ、二人に座られると私の膝がもたない」
二人掛けのソファ、シロとクロの間に窮屈そうに座って一ノ宮はホットミルクを飲んだ。
「くっついてると安心するねー」
「いや、飲みづらいし零しそうで怖いんだが」
「あっま、ホットミルクなんか飲むの何年振りだ」
「大学入ってからは確実に飲んでなかったよねー」
大半の人々は眠りについて、夜の活動にそれぞれ勤しむ人々もいる中、美人准教授とイケメン双子は甘ったるいホットミルクをゆっくり味わった。
「ここへはタクシーで来たのかい」
「うん、茂里 クンのタクシー」
「もう遅いから泊まっていきなさい……と言いたいところだが、客人用の布団はおろか寝るスペースも我が家には不足している」
「気にすんなよ、パジャマセンセェ、ベッドで重なって寝りゃあ問題ねーだろ」
「……」
「あ~、パジャマセンセェ、今えっちなこと考えたでしょ~」
「か、考えていない!」
自分達の間で素直に赤くなった一ノ宮にシロとクロは顔を見合わせて笑った。
「さ……さっきの口振りじゃあ、てっきり、シないと思っていたんだが……」
リビングと隣り合う寝室。
ダブルベッドで逃げ場を塞ぐように双子に挟み込まれた一ノ宮の弱々しげな声が薄闇の静寂を震わせる。
「えー? シないとか一言も言ってませんけどー?」
しなやかな背に密着し、柔らかな耳たぶを食んでいたボクサーパンツ一丁のクロは愉しげに笑う。
「こんな状況でシねぇとかありえねーだろ、なぁ、センセェ?」
片割れと同じくボクサーパンツ一丁のシロはパジャマの下に覗く一ノ宮の素肌に顔を寄せ、鎖骨を甘噛みした。
「あったかいね」
肌触りのよい羽毛布団と一ノ宮の温もりに安心して、クロはうっとり呟いた。
「ほんと、あったけぇ」
パジャマ越しに一ノ宮の胸に片頬を押し当て、シロも心地よさそうに目を瞑る。
どうにもまだ悪夢の残骸を引き摺っているらしい。
自分にくっつきっぱなしの二人に、眉間の縦皺など当に消えていた一ノ宮は聖母マリアみたいに微笑した。
「私は君達の前から突然消えたりなんかしないよ」
肩越しにクロの片頬にキスを。
シロの額にもキスをひとつ。
「悪い夢の方が君達の目覚めと同時に消えてなくなったんだ」
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